見出し画像

第217号(2023年4月10日)NATO流出機密文書、戦術核兵器の配備先 ほか

【インサイト】流出したNATO機密文書とウクライナ軍の反攻作戦

 ウクライナ戦争に関するNATOの機密文書が漏洩したのではないかという噂が広く出回っており、機密と書かれた文書の画像もネット上では閲覧することができます。日付は3月1日とされているので5週間ほど前の情報ではありますが、今回の戦争の実相を読み解く上で興味深い情報も数多く含まれているので、その中身を詳しくみていきたいと思います。

ネット上に出回っている流出文書とされるもの1
ネット上に出回っている流出文書とされるもの2

ロシア軍とウクライナ軍の損害

ロシア側
 戦死者(KIA):3万5500-4万5500人
 航空機:戦闘機/爆撃機72機、ヘリコプター82機
 戦闘車両:6004両

ウクライナ側
 戦死者(KIA):1万6000-1万7500人
 航空機:戦闘機/爆撃機60機、ヘリコプター32機
 長距離地対空ミサイル(SAM):11基
 戦術SAM:34基

戦闘に関与している兵力

ロシア側
 戦闘加入の可能な大隊:544個
 戦闘加入している大隊:537個(97%)
  常備の機動大隊(自動車化歩兵、戦車):218個
  予備大隊:41個
  補助大隊(親露派武装勢力、ワグネル):268個

ウクライナ側
 戦闘加入の可能な大隊:527個
 戦闘加入している大隊:474個(90%)
  常備の機動大隊:166個(効果的な戦闘が可能なもの:94+1個、配備されているが効果的な戦闘が不可能なもの:72個)
  予備大隊:40個(29個/11個)
  補助大隊(地域防衛大隊):268個(241個/27個)

戦闘序列

ロシア側
 東部部隊集団(東部軍管区より抽出)
  機動大隊:16個
  予備大隊:9個
  補助大隊:10個
 中央部隊集団(中央軍管区より抽出)
  機動大隊:14個
  予備大隊:7個
  補助大隊:10個
 西部部隊集団(西部軍管区より抽出)
  機動大隊:18+1個
  予備大隊:8個
  補助大隊:47個
 南部部隊集団(南部軍管区より抽出)
  機動大隊:46個
  予備大隊:5個
  補助大隊:174個

ウクライナ側
 機動旅団:34個(戦車3個、機械化歩兵13個、ヘリボーン7個、自動車化歩兵7個、山岳歩兵2個、海軍歩兵2個)
 砲兵:13個(自走砲兵旅団7個、ロケット旅団1個、多連装ロケット旅団1個、砲兵大隊3個、砲兵中隊1個)
 地域防衛旅団:27個(歩兵27個)

ウクライナ軍の反攻戦力の内訳と訓練・装備状態

第XX(判読できず。118?)旅団(訓練60%完了、装備品79%引き渡し済み)
 BMP歩兵戦闘車(ポーランド・チェコ供与):90両(引き渡し済み):1/13-3/4に訓練完了
 T-64戦車:13両(引き渡し済み):2月から3月に訓練完了
 タイプ未定の戦車:17両(4月までに引き渡し)
 2S1自走榴弾砲:10両:2月から3月に訓練完了見込み
第47旅団(訓練40%完了、装備品40%引き渡し済み)
 M2歩兵戦闘車(米):99両(ポーランドで訓練中):1/15-3/29に訓練完了見込み
 T-55S戦車(スロヴァキア):28両(引き渡し済み):訓練完了
 M109自走榴弾砲(米):12両(引き渡し済み):2/6-3/7に訓練完了見込み
 D-30牽引砲:12門(引き渡し済み):訓練完了
第33旅団(訓練20%完了、装備品32%引き渡し済み)
 マックス・プロ耐地雷装甲車(米):90両(20両引き渡し済み、3月中に50両引き渡し予定):2/6-3/30に訓練完了見込み
 レオパルト2A6戦車(独):14両(4月までに引き渡し予定):2/6-3/30までに訓練完了見込み
 レオパルト2A4戦車(カナダ):18両(4月までに引き渡し予定):2/6-3/18までに訓練完了見込み
 レオパルト2A4戦車(ポーランド):14両(4月までに引き渡し予定)
 M119自走榴弾砲:12両(引き渡し済み):訓練完了
第21旅団(訓練0%完了、装備品38%引き渡し済み)
 CVRT歩兵戦闘車(英):20両(4月までに引き渡し予定):3/6-3/30までに訓練完了予定
 セネター装甲機動車(カナダ):30両(引き渡し済み):3/6-3/30までに訓練完了予定
 ブルドック歩兵戦闘車(英):20両(3月までに引き渡し予定):3/6-3/30までに訓練完了予定:3/6-3/30までに訓練完了予定
 ハスキー装甲機動車(英):21両(3月までに引き渡し予定):3/6-3/30までに訓練完了予定
 M113走行兵員輸送車(米):10両(引き渡し済み)
 T-64戦車:30両(引き渡し済み):3/6-3/30までに訓練完了予定
 FH70牽引砲:10門(6門引き渡し済み):3/6-3/30までに訓練完了予定
第32旅団(訓練0%完了、装備品56%引き渡し済み)
 マックス・プロ耐地雷装甲車(米):90両(63両引き渡し済み):3/6-3/30までに訓練完了予定
 T-72戦車:10両(4月までに引き渡し予定):3/6-3/30までに訓練完了予定
 タイプ未定の戦車:20両(今後引き渡し予定):3/6-3/30までに訓練完了予定
 D-30牽引砲(エストニア):12門(引き渡し済み):3/6-3/30までに訓練完了予定
第37旅団(訓練10%完了、装備品43%引き渡し済み)
 マスティフ/ハスキー装甲機動車(英):30両(4月までに引き渡し予定):3/6-3/30までに訓練完了予定
 マスティフ/ウルフ装甲機動車(英):30両(2月までに引き渡し予定):3/6-3/30までに訓練完了予定
 セネター装甲機動車(カナダ):10両(今後引き渡し予定):3/6-3/30までに訓練完了予定
 AMX-10戦闘偵察車(フランス):14両(9両引き渡し済み、残りは3月中に引き渡し予定):3/6-3/30までに訓練完了予定
 タイプ未定の戦車:20両
 D-30牽引砲(エストニア):12門(今後引き渡し予定)
第118旅団(訓練0%、装備品65%引き渡し済み)
 M113装甲兵員輸送車(米):90両(引き渡し済み):3/6-3/30までに訓練完了予定
 T-72戦車(ポーランド):28両(4月3日までに引き渡し予定):1/16-3/30までに訓練完了予定
 M-109自走榴弾砲(米):6門(3月7日までに引き渡し予定):2/27-3/28までに訓練完了予定
 FH-70牽引砲(エストニア):8門(4月までに引き渡し予定):2/26-3/30までに訓練完了予定
第117旅団(訓練0%、装備品50%引き渡し済み)
 ヴァイキング全地形型装甲車(オランダ):28両(引き渡し済み):1/30-3/29までに訓練完了予定
 XA185装甲兵員輸送車(フィンランド):20両(引き渡し済み):2/20-3/20までに訓練完了予定
 M113装甲兵員輸送車(米):10両(4月までに引き渡し予定):2/20-3/20までに訓練完了予定
 セネター装甲機動車(カナダ):10両(今後引き渡し予定):2月から3月に訓練完了予定
 PT-91戦車(ポーランド):31両(4月3日までに引き渡し予定):2月から3月に訓練完了予定
 D-30牽引砲(エストニア):12門(10門引き渡し済み):3/6-3/30に訓練完了予定
 AS90自走榴弾砲:4両(今後引き渡し予定):3/6-3/30に訓練完了予定
第82旅団(訓練0%、装備品14%引き渡し済み)
 ストライカー装輪装甲車(米):90両(3/6-10のポーランドで訓練予定):2/20-3/29までに訓練完了予定
 マルダー歩兵戦闘車:40両(ドイツで4月まで訓練予定):2/5-4月までに訓練完了予定
 チャレンジャー2戦車(英):14両(英国で4月まで訓練予定):1/30-3/6までに訓練完了予定
 M119自走榴弾砲:24両(引き渡し済み):2/20-3/29までに訓練完了予定

流出文書が示すウクライナ軍反攻の見通し

『ニューヨーク・タイムズ』の報道を見るに、現在までに出回っている画像は流出したものの一部であり、実際にはウクライナ軍が反攻用に準備中の兵力として12個旅団が列挙されているといいます。また、流出文書に記載されている9個旅団はNATOが訓練を提供している部隊ということなので、残りはウクライナ軍が自前で訓練しているのでしょう。

ここから先は

2,922字 / 1画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?