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第269号(2024年6月17日) ロシア軍が戦術核演習第二段階を開始


【今週のニュース】ウクライナ向け戦闘機をめぐる二題

ウクライナ空軍航空部隊司令官へのインタビュー

 6月9日、『ラジオ・リバティ』が、ウクライナ空軍航空部隊司令官であるセルヒー・ゴルブツォフ准将のインタビューを掲載した。

 JDAMの実証試験に目処がついてGBU-39とGBU-62の運用が始まったこと、これらの攻撃手段を活用するためにはロシアの防空システム排除が重要だがこの点についてはまだ交渉が続いていること、F-16を活用するには複合的な支援能力が求められることなど、興味深い内容が多い。なお、このゴルブツォフのインタビューに関しては「F-16をウクライナ国外から作戦させることを意図している」という受け止めがあり、特にロシアではそういう論調が見られたが、実際に述べているのは「一部のF-16は訓練用に国外に残す。修理も国外でやる」という割と当たり前の話である。

フランスもミラージュ2000を供与へ?

 6月6日、フランスのマクロン大統領は自国製のミラージュ2000-5戦闘機をウクライナに供与する意向を表明した。数は明示されていないが、時期については「それこそが重要」であるとして、年内にパイロットの訓練を完了するとしている。とするとまずは防空戦闘機としての運用が主体になるのではないだろうか。前掲のゴルブツォフが述べているように、戦闘機で「這う」(地形追随飛行で対地攻撃を行う)ことをマスターするにはかなり時間がかかるからである。
 また、マクロンはミラージュ2000供与が国際的な連合の枠組みで行われ、そのパートナー国については明かすわけには行かないとしている。フランスの他にミラージュ2000をまとまった数運用している国、となるとNATO内ではギリシャがあるが、同国のこれまでの姿勢からして、真面目に協力する気があるかどうかはちょっと微妙なところであろう。


【インサイト】ロシア軍が戦術核演習第二段階を開始

演習の概要

 6月11日、ロシア軍は非戦略核兵器(戦術核兵器)演習の第二段階を開始したことを明らかにしました。5月21日に開始された第一段階に続くものです(詳細は本メルマガ第266号を参照)。ロシア国防省によるアナウンスは次のとおりでした。

ロシア連邦大統領の決定に従い、非戦略核戦力演習の第二段階が開始された。
演習の過程においては、非戦略核兵器の戦闘使用に関するロシア連邦軍及びベラルーシ共和国軍諸部隊の合同訓練の問題が演練される。
演習の目的は、連合国家の主権と領土的一体性をいかなる条件下でも確保するためにロシアとベラルーシの非戦略核兵器の戦闘使用に関して部隊の人員と装備品の即応状態を維持することにある。
これ以前の演習第一段階においては、「イスカンデル」作戦戦術ロケットコンプレクスが訓練用特殊弾薬を受領し、これらをロケットに装備し、ロケット発射訓練を行うために指定された待機エリアへ隠密に展開するという課題が南部軍管区のロケット兵団の人員によって演練された。
演習に動員されたロシア航空宇宙軍の小部隊の人員は、訓練用特殊弾頭部の航空機用攻撃手段(空中発射型弾道極超音速ロケット「キンジャール」を含む)への装着と指定されたパトロール空域への進出を演練した。

 このように、最初のアナウンスは実質的に第一段階の話ばかりしており、ベラルーシ軍が第二段階に参加するという以上のことは何も言っていません。
 一方、6月12日のアナウンスではもう少し具体的なことが明らかにされています。

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