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第103号(2020年10月19日) 国連北朝鮮専門家パネル報告書から見る北朝鮮の核・弾道ミサイル開発


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【レビュー】国連北朝鮮専門家パネル報告書から見る北朝鮮の核・弾道ミサイル開発

 前回は10月10日の軍事パレードに登場した北朝鮮の新型ICBMを取り上げて北朝鮮の核戦略について考察しました。今回はその補助線として、国連安保理の北朝鮮専門家パネルが作成した報告書(日付は8月だが公表は9月末)の中から、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発に関する部分をレビューしてみたいと思います。報告書の原文はこちらから閲覧できます。
 翻訳はいつものようにAI翻訳サービスDeepLを使用し、適宜手を入れました。各文等の数字は報告書内のパラグラフ番号を示します。

決議1874(2009年)に基づく専門家パネル報告書

II. 核及び弾道ミサイルに関する最近の活動


<核>
2. 朝鮮民主主義人民共和国は、高濃縮ウランの生産や軽水実験炉の建設を含む核計画を継続している。ある加盟国は、朝鮮民主主義人民共和国が核兵器の生産を継続していると評価した。
3. いくつかの加盟国は、ヨンビョンのウラン濃縮施設がまだ稼働していることを指摘した。ある加盟国は、2020年3月にこのウラン濃縮施設の6つの冷却装置のうち1つが撤去されたと報告したが、この作業の目的や結果は明らかにしていない。いくつかの加盟国は、ヨンビョンの実験用軽水炉の建設が進行中であることを示した。ピョンサンのウラン鉱山とイエローケーキ製造プラントは稼働している。
4. プルトニウム生産に関して、使用済燃料の冷却と取り出しには十分な停止期間があるものの、2016年半ばから2018年半ばの間に、5MW(e)原子炉の運転再開や、前回の運転サイクルで照射された使用済燃料棒の取り出しを示す情報をパネルは入手していない。
5. プンゲリ試験場では、報告期間中に、主要管理支援エリアの除雪、ポータルへ通じる継続的な足跡の通過、要員や車両の集団の存在など、断続的な活動が衛星画像を通じて観察された。これらの活動は、敷地が立入禁止区域内にあり、敷地内の維持管理や監視活動が行われていることを示唆している。
分かっているのはトンネルの入口のみが破壊されたことであり,トンネルの全体の取り壊しの兆候がないため、ある加盟国は、一旦決定すればトンネルの一つを再構築し、試験を支えるために必要なインフラストラクチャを再設置し、試験装置を設置するのに2~3か月で十分であると評価した。
6. いくつかの加盟国は、朝鮮民主主義人民共和国の核戦力の開発についての評価として、過去6回の実験を含むその活動を通じて、おそらく弾道ミサイルの弾頭に組み込むための小型化された核装置を開発したと述べた。ある加盟国は、朝鮮民主主義人民共和国が、突破支援パッケージ(訳注:MD突破を可能とするための囮弾頭などを指すと思われる)のような技術的改良を組み込むことを可能にするため、あるいは潜在的には複数の弾頭システムを開発するために、さらなる小型化を模索している可能性があると評価している。
7. いくつかの加盟国は、カンソンの施設がウラン濃縮のための施設であることを確認する情報を持っていないとパネルに対して回答した。ある加盟国は、主要生産棟の近くでUF6ボンベが保管されているのは見たことがないと指摘した。
8. ある加盟国によると、第2経済委員会は2018年末、核プログラムと弾道ミサイルプログラムに使用されうる複数のデュアルユース製品を調達しようとした。このことは、朝鮮民主主義人民共和国が外国からデュアルユースの「チョークポイントアイテム」を調達する努力を続けていたことを示している。
9. 金正恩委員長率いる朝鮮労働党第 7 回中央軍事委員会の第 4 回拡大会議では、「国の核戦争抑止力をさらに高め、戦略兵力を高度警戒運用態勢に置くための新たな政策」が提案されたと報じられた。

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