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GLOBE・GLOVE(10)
10
その日も、いつものように暑い日だった。
初回、マウンドに上がった美緒が、今まで見たこともないほど制球を乱した。
ストレートのフォアボールを二者続け、なんとか次の打者はゴロに打ち取ったものの、その次にはデッドボールを食らわせてしまった。大ピンチを招いたまま美緒はマウンドを降り、ファーストに入っていた川村が登板したが、準備不足もあり、先制点を許してしまった。相手のピッチャーは、全打席で川村との勝負を避け、結果、美緒の出したランナーが決勝点につながった。
試合後、美緒の腕は腫れ上がり、不自然な方向にねじれていた。
肘の骨折と腱断裂。ピッチャーとしては再起不能。
それが美緒に下された診断だった。
美緒は女の子独特の肘の柔らかさを生かし、あり得ない方向に腕を曲げてシンカーとスライダーを投げていた。そしてこの大会は毎日倍量の痛み止めを飲んでピッチングを続けていた。夏になっても、ずっと長袖のシャツを着ていたのは、腕の腫れを隠すためだった。
「いや、この大会くらいは保つと思っとったけど、あかんかった。みんなに迷惑かけた」
美緒が言ったのはそれだけだった。
女子が男子と同じチームで公式に野球ができるのは、中学三年生までなのだ。
美緒の親は中学校の先生たちに何か抗議をしたそうだったが、美緒自身がそれを言わせなかった。
次の話はこちらです。よろしくお願いします。
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