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GLOBE・GLOVE(11)
11
秋の進路指導で、僕にあり得ない話が降ってきた。
捕球技術を買われ、川村と一緒に野球の名門男子校からスカウトされたのだ。川村は特待生、僕は一般枠だったが、これだけ野球で評価されたことは初めてだった。
両親と姉ちゃん、担任はそろって大反対した。たった一人賛成してくれたのは、美緒だった。
「野球、好きやろ。行かんかったら一生後悔すんで」
左肘が曲がったまま固まってしまった美緒に言われると、僕に選択の余地はなかった。
「頭、坊主のままやで。色気づいて、髪伸ばしたら、レギュラーなられへんで」
そう言って美緒が餞別代わりにくれたバリカンを受け取り、僕は川村と同じ高校に進学した。
入学後は野球漬けだった。夜には家に帰って寝るだけ。電車で寝てしまい降りる駅を乗り過ごしたことも一度や二度ではない。土日も正月もない。当然、異性交遊どころではなく、成績も超低空飛行だった。川村は、それでも他校に彼女がいたようだが。
肝心の野球はというと、レギュラーはおろか、ベンチメンバーにすら届かず、ブルペンキャッチャーとしてチームを下支えする毎日が続いた。中学時代から苦手だったバッティングは、一日千スイングのノルマをこなしても一向に上達しなかった。ちっぽけなプライドが、美緒に自分から連絡を取る邪魔をした。
びっくりしたのは、それまで授業以外で教科書を開いているのを見たことすらなかった美緒が、私立の女子校、しかもそこの特進コースに進学したことだった。
友達の友達のそのまた友達から聞いた噂では、美緒は高校に入ってから人が変わったようにガリ勉になり、そして相変わらず他人を寄せ付けずにいるとのことだった。
僕はそれを聞いてホッとした。そしてそう思ってしまう自分が、情けなかった。
次で最終回です。
よろしくお願いします。
第一話はこちら。
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