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耳で読む教育基本法・第2条

教育基本法を朗読しました。
今回は第2条です。

第2条五で「我が国と郷土を愛する」という文言があります。
2006年に教育基本法が改正されたときに、
追加されたこの文言には、
次のようなようなねらいと意義がありました。

  1. グローバル化への対応
    国際化が進む中で、自国の文化や歴史に対する理解と愛着を持つことが重要とされました。国際社会で活躍するためには、自国のアイデンティティをしっかり持ちつつ、他国の文化や価値観も尊重する姿勢が求められるからです。

  2. 地域社会の絆の強化
    地域に対する愛着心や責任感を育てることが目指されました。地域社会との結びつきを強めて、地域の一員として所属意識を高め、地域の発展や維持に貢献する人材を育成することが期待されるようになったからです。

  3. 歴史や伝統の尊重
    日本の歴史や伝統を学び、それを尊重する態度を養うことで、文化的な継承を促進する狙いがありました。文化遺産の保護や伝統的な価値観の維持を図るためです。

  4. 教育の質の向上
    児童生徒、学生が自分たちの国や地域を愛することを学ぶことで、教育全体の質を向上させることが期待されました。愛国心や郷土愛は、道徳教育の一環として位置づけられ、人間形成に寄与するとされました。

  5. 社会的な一体感の醸成
    「我が国と郷土を愛する」という理念を通じて、社会全体で共有する価値観を育むことが意図されました。社会的な一体感や連帯感を強め、共通の目標に向かって協力する社会の形成を目指すことにつながるからです。


ただ、この文言 「我が国と郷土を愛する」 には、
さまざまな議論が起こりました。

── 愛国心の強制では?

愛国心を法律で明示することが、
強制的に愛国心を植え付けることに
なるのではないか
という懸念がありました。

特に、戦前・戦中の教育において
国家主義や軍国主義が強調された
歴史を考慮すると、
再び同様の教育が行われるのではないか
との不安が広まりました。

── 多様性の尊重を損なうのでは?

国や郷土に対する愛着を強調することが、
異なる価値観や文化の尊重を
損なうのではないかという
懸念もありました。

特に、多文化共生や国際理解を重視する
教育の観点から、画一的な価値観の
押し付けになるのではないか
と批判されました。

── 個人の自由を侵害する?
愛国心を教育に組み込むことが、
個人の思想や信条の自由を侵害する可能性が
あるとの指摘もありました。

特に、思想・良心の自由は
憲法で保障されているため、
その尊重が懸念されました。


このように、
「我が国と郷土を愛する」
という文言の追加に関しては、
多様な観点からの議論が行われ、
多くの意見が交わされました。

最終的には、
この文言が教育基本法に追加されましたが、
それによって生じた議論や懸念は、
今後の教育政策や実践においても引き続き
重要なテーマとして扱われています。


第一章 教育の目的及び理念


(教育の目標)

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。



ちなみに、昭和22年に制定された
元祖・教育基本法では、
第2条は「教育の方針」であって、
目標ではありませんでした。

第二条(教育の方針) 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。


BGMは、ぶんちゃん @bunbunmarufumi の楽曲「ゆうしゃのむらの朝」をお借りしました。


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