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社長直下の外国人新卒2年目経営企画の気付き

ゴーリストに入社し、社会人2年目になったばかりの今年4月、社長直下で経営企画として配属されました。

外国人・女性・新卒未経験としてはなかなかのレアケースで、「めちゃくちゃ意識が高いのでは」と思われがちだが、実は社会人になるまでビジネスに対する知識も興味も全くなかったのです。もちろん嫌いではないですが、自ら要望を出してやっている仕事でもありません。

どちらかというと、ハリー・ポッターがいきなり「実はあなた、魔法使いです。闇の魔法使いと戦う運命なんです」と言われ、不安と興奮が混じっていて、思いがけない冒険のようなものです。

今回はその冒険のはじまりについてちょっと語りたいと思います。

サブカル女子、経営企画になる

改めて自己紹介をしますと、私の学生時代の専攻は日本語と比較文学で、部活はSF研究会。週末はひらすら下北沢を歩く、毎月必ずライブに行く、寝酒が密かな楽しみ、理想の仕事は文芸翻訳(実際本を出版したこともある)。丸顔のくせにやたらに背が高く、のんびり屋の女の子です。

そんなサブカル女子がひょんなことで無名なITベンチャーに入り、新卒1年目の終わりの人事面談で、社長(社内では龍さんと呼んでいる)にいきなり「これからは経営企画をやってもらいたいけど、どう?」と言われました。

私「えっ」

龍さん「まずは財務から始めるが」

私「やります!!!」(と言っても、ケイエイキカクってなんやねん?ザイムってどういう仕事?)

はい、何も分かっていなかったのです。ノリで言ってしまっただけです。

40人の背中を守る孤独

鈍感なせいか、そもそも財務/経営企画に対する知識が絶望的にないせいか。配属が決まった数ヶ月後、すでに現場に立っている状況で、「あれ、ひょっとしたらとんでもない仕事を任された・・・?」とようやく気付き始めました。

しかし高校卒業以来、スマホで家計簿をつける以外に数字を触ったことがありません。「財務諸表」という日本語の読み方すら分からなかったところです。そこでうちの経営コンサルの方が親切に教えてくれました。

「これはPLと言います。家計簿よりゼロがちょっと多いだけです。あなたが40人の社員のお母さんになることをイメージしてみたらいいかもしれません」

20代の女の子が「40人の社員のお母さんになろうよ」と言われてもさ・・・と思うけど、仕事の実感がなんとなく湧きました。

「これはうちが銀行から借りたお金の記録です。これからはあなたに管理してほしい」
「来週銀行と打ち合わせするけど、同席して」
「コロナで会社がやばくなったらこういうコスト削減を考えているので、BCPプランを作ってみて」
「新規事業のPL/CFのシミュレーションを作ってください」
「そろそろ来期の事業計画を作ってみようか」

と、新しい仕事が次から次へと飛んできました。

そこで感じたのは、財務ってとてつもなく孤独な仕事だなーということです。

会社の存続、すなわち40人の社員とその家族の人生は、社長の経営判断に左右されます。そして財務の仕事は、経営判断に必要とされる数値・指標を正確かつタイムリーに社長に提供することです。

非常に責任重大な仕事。しかし社内の同期や先輩も、社外の友達も、自分と似ている立場の人が全くいなくて、お悩み相談が難しいです。仕事で扱っているのは会社の秘密情報やまだ公表できない新規プロジェクトで人に言えません。そのため自分の頑張りが周りに見えなくなり、360度評価の結果も下がっています。

そして何より、うちの会社は「ネガテイブ即シェア」や「変えられるもの(に集中する)」のバリューを大切にしている一方、財務の仕事をするようになったら、ネガティブが言えなくなり、ひさすら変えられないものに向き合うようになりました。

例えば、コロナのような有事が起きても会社が潰さないように、常に最悪の状況を想像し、そのような状況に備える必要があります。しかし社長が毎日そんなことを考えたら経営に集中できません。営業やエンジニアが考えても本業の時間が取られるだけです。新入社員の子たちに知られたらそれは大騒ぎになります。そこで40人分の不安とネガティブを大切に預かり、40人の背中を守り続けることは財務の仕事です。

まるで親が子供を守るために、大人の世界の辛さを隠しているみたい。

もちろん自分もまだ子供で、一人前の財務ではありません。ただ、短い間だけでも、会社の経営を支える覚悟を少しだけ持つようになりました。

これからは、本物の孤独を味わうことになるでしょう。

マネジメントされないほうが、成長する

財務/経営企画の仕事をしていると書いていますが、正確に言うと、いまは財務とライターの兼務で、財務4割、ライター6割。ライターも全く未経験で、しかも外国語である日本語でのSEOライティング。

母国から離れ、コロナ感染拡大最中のフルリモートで、新しいこと × 新しいこと。

もう普通に「ここはどこ?わたしはだれ?」になるところです。

それまで私がいるチームのメンバーは20代ばかりで、上長も20代・女性・マネージャーでした。しかし財務チームのメンバーは外部の経営コンサル、社長、役員、経理と私で、上長が40代・男性・社長になりました。しかも、社長がマネジメントをする気が全くなさそうです。

まず、仕事がちゃんと依頼してくれないのです。今までのチームでは「○月×日まで△△の方法を使って〇〇のタスクを完成してください」のような依頼に慣れていたが、龍さんはそんな親切なことをしません。「Aの仕事をやっといて」とふわーと言われ、会議で「Aをやりました」と報告したら「なんでAに関連するBとCについて考えていなかったの?」と聞かれます。次回の会議で気になるBについて説明したら「で、Bをどうするの?会議は問題提起の場ではなく、問題の解決案を出して経営陣の判断を求める場だ」と言われます。

そして、質問をしても答えを教えてくれないことが多いです。もちろん質問の性質によっては答えてくれることもありますが、「それはあなたが知っておく必要があります」「難しいことだからこそあなたに考えてほしいです」のような返事も多いです。

森のど真ん中にポンと置かれて、「さぁ宝物を探しましょう!南のほうで待ってるよ!」と言われ、えっ?宝物ってなに?南ってどっち?!みたいな感じでした。

忙しくて私をかまう暇がないだろうな・・・と思っていましたが、全然違っていました。

久しぶりの出社日、せっかくなので王将の餃子で飲むことになり、龍さんがマネジメントについてさりげなく話してくれました。「あまりにも丁寧な指示をすると、メンバーが何も考えずに作業をすることになってしまうので、成長が遅い。曖昧な注文をしてメンバーを考させるほうが成長が早くなる。なのでわざと細かいマネジメントをしていないのだ。まあ、あなたを試しているところもあるけど。」

プレーヤーとして仕事をすると明確なKPIがあり、そのKPIさえ達成できれば万事OK。しかし経営管理陣はそういかない。KPIを達成する側ではなく、決める側であるから。ビジネスヒエラルキーの上層にいけば行くほど、他人からマネジメントされる、仕事が依頼されることが少なくなるので、「私がやるべき仕事はなんですか?」と常に考えないといけないのです。

おっさんから教えてもらってもおっさんを超えないはず。じゃーなんで?

なんで私のような知識も経験もない外国人新卒二年目が経営企画なんてやっているの・・・?とよく思ったりします。

経営陣のおっさんたちからいくら教えてもらっても、おっさんたちに超えることがまずない。労働集約でもないし、龍さんにはできないけど私にはできることなんてあるかよ!と悩んでいました。

私なんか本当にいいのか、何かの間違いなのでは、と考えている最中、ある日の経営会議での出来事に触発されました。会議で、外国人就労支援事業の責任者の先輩が下期のOKRについてアドバイスを求めています。そこで龍さんは、「日本一の外国人雇用について詳しい女性になればいい」と言いました。

「なぜ『女性』ですか?」と私も先輩も不思議に思いました。

「資本主義は男性が作り上げて、男性が主導権を持っている世界。なので、僕のようなおっさんが外国人の就労支援について一生懸命に語ってもあんまり面白くない。当たり前のことだから。

「あなたのような若い女性が、外国人採用が企業の経営戦略に与えるインパクトについて誰よりも情熱的に発信できたら、世の中は驚くだろう」と、龍さんが答えてくれました。

そうなんですね。なぜ私が経営企画をやっているんでしょう。

もちろん、私にポテンシャルを感じているとか、会社が海外進出を考えているとか、ちょうど財務まわりを強化したいフェーズになってきたとか、理由は色々あります。

しかし一番しっくりくる答えは、「やっているのは私だから」、です。

財務や経営企画はとても難易度が高い仕事で、誰でもできるわけではありません。しかし、経営者というと「中年日本人男性」のイメージがまず思い浮かび、その裏には「女性は数字に弱い」「外国人を経営層に入れてはいけない」「経験も資格もない若手がCFOになるなんて無理」のようなステレオタイプが存在しています。でもゴーリストの皆さんはそんなステレオタイプを全く持っていなくて、私の国籍・性別・経験を気にせずに、ひとりの人間として接して、評価してくれました。そのこと自体は、悲しいけど、今の日本ではまだ当たり前ではないため、非常にイノベーティブなことです。

しばらくはおっさんたちを超えることがないでしょう。一方「私だからできることってなに?」が分からないのも当たり前。「若手外国人女性」が経営に参画することはそもそも珍しくてロールモデルがないからです。お飾りのダイバーシティー推進にならないように、行動を重ねて答えを探していきたいと思います。


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