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テレビ番組のブランディング・昭和篇 ② ~ 3分で読めるブランドノチカラ (81)


○ ドリフターズの8時だよ全員集合は子供と親の双方をおさえたTBSのキラーコンテンツ
○ 放送期間半ばの小3はいまや定年退職間近
○ ブランドソーマはオープニングとクロージングにあり
○ 最高視聴率は50.5%の怪物番組

ブランディングの視点でテレビのヒット番組を解析してみるのって面白いですね。解析ってのは大げさですね。解剖?…いずれにせよクセになりそうです。

前回は水戸の黄門について考えてみましたが、引き続き昭和の名番組を取り上げて、ブランディング視点で解剖してみたいと思います。

私見なので、テレビ局OBの皆さん悪しからず。

次の解剖番組はドリフターズの「8時だよ全員集合」です。

1969年から1985年まで足掛け16年間の長きにわたって、毎週土曜日の夜8時からTBS系列で放映されていた公開バラエティ番組です。

前回取り上げた同じTBSテレビの時代劇「水戸黄門」第一期は同じ1969年から始まって1983年の終了ですから、東野英治郎バージョンの水戸黄門とほぼ同時期に放映されていたわけですね。

この頃の小中高生は、土曜夜は「8時だよ、全員集合」を観るために文字通りテレビ前に集合し、月曜の夜は、お父さんお母さんが観る水戸黄門を傍から眺めていたんですね。

TBS、ガッチリとファミリー層をおさえてますよね。このキラーコンテンツ「8時だよ、全員集合」、フルネームで呼ぶにはちょっと長いんで以降は「8全集」に省略しますね。LOL

放送中間地点の1977年に小学校3年だったひとは、2023年時点で大体58才、定年退職間近です。

番組終了時点の1985年生まれのひとが、46歳なんですから、荒井注、仲本工事、高木ブーが舞台を跳ね回ってたことなんか知らないですよね。そもそもこの三人のことを知らないか。

いかりや長助だって、踊る大捜査線の刑事役で認識されてるんだろうし、加藤茶、志村けんに至っては、加トちゃんケンちゃん、バカ殿、変なおじさんの時代ですね。

8全集の全盛期を知る定年間近ピーポーにとっては、当時のこの番組はmust seeな番組だったんだと思います。

国民的番組という言葉がよく使われますが、8全集はまさにそうでした。

この番組の凄さは、作り込まれたコントを中心とした、大勢のゲスト参加のバラエティを、毎週全国各地のどこかの都市の公民館で、生放送で行ったことにあります。

コントに使う舞台装置は大掛かりなものだし、コントの動きも精緻に繰り返しリハーサルをしないと失敗する類いのものが多かったと思います。

でも出来上がりのコントをアドリブのごとく見せてるんですね。どれだけの準備が必要だったか。それも毎週。「どんだけー」です。

制作舞台裏の苦労ストーリーは山ほどあるでしょうが、そこはこのエッセイの趣旨ではありません。

趣旨は、この番組をブランディング視点で解剖することです。

ブランディングの入り口であるお馴染みのブランドソーマ※は、番組のオープニングとエンディングにあったと確信します。

前述の通り、8全集は毎週全国各地の会場を巡り生放送されていました。

冒頭はリーダーいかりや長介の「8時だよ全員集合!」のタイトルコールを合図に会場後方からドリフターズが登場して、ゲストが横一列に並ぶ舞台に上がり、オープニングソングが始まる。毎週このルーティンです。

「えんやーこらやっと、どっこいじゃんじゃんこーらや」で始まるアップテンポのこの歌は、北海道の炭鉱町の盆踊りの歌をベースにして戦後に三橋美智也という有名歌手が「北海盆唄」として歌ってヒットした曲を、8全集用に替え歌アレンジしたものです。

番組の構成は、ドリフターズ演ずるコント劇場と、ゲストを交えて行われる歌を軸にした掛け合いコント。

そして、番組最後のクロージングは、ゲストも含めて横一列に再集合してのエンディングソングです。

ババンババンバンバン♪で始まるこの「いい湯だな」という歌は、元々は永六輔作詞、いずみたく作曲で、デューク・エイセスという男性コーラスグループが歌った曲をドリフターズ版としてアレンジしたものです。

このエンディングソングでは、加藤茶がテンポ良く画面に向かってこんな事を言うんですね。

「風邪ひくなよ!」「勉強しろよ!」「歯磨けよ!」

これって、明らかにテレビの前に座ってる子供たちに向かって言ってますよね。お父さん、お母さんに勉強しろ、歯磨け、なんて言わないでしょ。

さて、オープニングソング、エンディングソングがブランドソーマとして誘引していく先のemotional benefitは、マレーの欲求リスト※の二つ、親和欲求と遊戯欲求を満たしてくれるという事にあるんだと思います。

親和欲求は、他人と交流したい、集団に加わり仲良くしたいという人間が持つ根源的心理欲求です。これ、まさに8全集が展開してくれていることです。

子供たちが番組で面白かった歌とかコントを、翌週クラスで披露して大笑いという光景が目に浮かびます。これってクラスメイト間の親和欲求です。

そして遊戯欲求。これは言うまでもありません。真似して遊ぶ。

更には、この番組のもうひとつの強みに、「親の公認」があったように思います。

「くだらない番組見てんじゃないよ」と言いながらも、子どもに「宿題やれ」「歯磨けよ」と言ってくれる番組は認めざるを得ないじゃないですか。

しかも出演ゲスト的に、お父さんにはピンク・レディーとかのミニスカートのアイドル、お母さんには西城秀樹等ヤングメン (LOL) をゲストにしっかり呼んでるんだから、完璧です。

勿論、多くの保護者たちに人気がある一方で、PTAを始めとする教育熱心な親や文化人、批評家から「低俗番組」と激しく非難を受けていたのも事実です。

前項水戸黄門の回で、このゴールデンタイム時代劇は43.7%の最高視聴率を記録したお化け番組だったと書きました。

ドリフターズの8全集はそれをはるかに上回る50.5%の最高視聴率を叩き出したんです!
もう怪物番組です。

最後に敬意を込めて再度フルネームで…「8時だよ全員集合」、実によく出来たブランディングをしていました。脱帽です。

最後に。

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※ ブランドソーマ    
グローバル調査会社のミルウォード・ブラウン南アフリカの会長、エリック・デュ・プレシスの作った考えと造語。ひとの意識下に隠れている「直感」は多くの経験を踏まえたうえの合理的な脳の反応であり、ひとの行動を特定の方向に誘引する、とする著名な神経学者のアントニオ・ダマシオの説を敷衍して、ブランドに紐づけられる「直感」がある、それをブランド・ソーマと呼びたい、とプレシスがとなえた。ソーマ、Somaは英語で肉体という意味でmentalの対義語。直感は根拠のない心理的、精神的なものではなく、脳に記憶された合理的な反射、つまり物理的、肉体的なものであるとする説。

※ アメリカの心理学者マレーは、本能から来る消費者の動機を研究して、39種類もの欲求リストを作成しました。




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