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古畑任三郎のブランディング〜3分で読めるブランドノチカラ (87)

せっかくなので、古畑任三郎のオープニングトーク風に本稿を始めてみますね。上手くいくかな。

え〜、前回このブログの筆者は、三谷幸喜さんが刑事コロンボへのオマージュとして古畑任三郎を書いたことは周知のことである、と言っています。加えて、古畑任三郎、私のことですね、彼のオープニングトークは、実はアメリカの人気TVドラマ、「ヒッチコック劇場」※でアルフレッド・ヒッチコック本人が一人語りするのによく似ている、つまりヒッチコックへのオマージュでもあったのだろう、なんて書いています。
ほかのひとと比べられると競争心が湧いてくるのが人の常です。三谷幸喜さんがどう思っているかは聞いたことがありませんが、実は私のオープニングトークは、番組のブランディングという意味で言うと、ヒッチコック劇場に比べて優れている点があるんです。みなさんお気づきですか? それはですね・・・


古畑任三郎ファンに怒られそうなので、真似っこはここまでにしておきますね。LOL

古畑任三郎のオープニングトークこそが、この平成初期の大人気ドラマのブランドソーマ※ではないかと思う、と前回書きました。

そして、冒頭古畑さんが言ったように (LOL)、これはヒッチコック劇場※のアルフレッド・ヒッチコック自身によるモノローグに比べて、ブランディングの観点から言うと、優れているんです。何故か?

ヒッチコック劇場の始まった頃は、ドラマの冒頭でヒッチコックは小太りなカラダにスーツを着て、素っ気ないスタジオでカメラ目線でドラマへのイントロダクションを訥々と語ります。これは古畑任三郎とほぼ同じです。

ヒッチコックの番組冒頭のこのモノローグは、間違いなくヒッチコック劇場のブランドソーマだったと思います。私は日本で放送された吹き替え版を小さい頃に見た記憶があるんですが、半世紀以上経った今でも、熊倉一雄が声優をしていたこのモノローグ場面はクリアに覚えています。これを聴いた途端に気分はミステリーです。

戻ります。暫くすると、モノローグのコーナーでヒッチコックは色々と小道具を使ったり、スタジオセットをドラマに繋がるものに仕立てていくようにするんです。舞台が豪華客船ならば、セットを船上デッキにするとか。毎回工夫しちゃってるんです、要は。

これに比して、古畑任三郎はどうでしょう。終始一貫して、古畑任三郎は黒一色の服装でスポットライトを浴びて、淡々と語ります。初回から最終回まで、全く同じパターンが繰り返されます。工夫は毎回の彼のセリフにのみなされています。

Branding の要点はConsistency & Continuityです。
同じことを、繰り返して続ける。

一貫性と継続性ですね。

当たり前じゃないか、と思うでしょう?
でも、これって実はとっても難しいことなんです。

ひとは状況に合わせて工夫したくなっちゃいますから。それが自然です。

会社でマーケティング担当なんてしてた日にゃ、工夫して試行錯誤してないと、下手すると、仕事してない!と評価が下がりますからね。

新しい戦略を創出することが自己目的化しちゃう。

マーフィーの法則的※に言うと、マーケターが身を削って作り上げたブランディング戦略の数だけ、製品導入は失敗する・・・言い過ぎですね。

古畑任三郎はオープニングモノローグに代表される、マレー的に言えば※知識欲を刺激するブランディングを毎回同じパターンで全作繰り返しています。徹底的に。

優れたブランディングのお手本です。


そうそう、前回の稿の最後は「古畑任三郎の二つ目のブランドソーマは・・・」で締めました。

二つ目のブランドソーマ、それはドラマの途中で挟まれる古畑任三郎の二度目のモノローグです。

ドラマセットが暗転して、スポットライトが自分にあたるのと同時に、犯人を特定するに至るキーがわかりました、と古畑任三郎が語ります。

そして暗転が終わりドラマは解決篇として再開するわけです。

二つ目のブランドソーマというか、冒頭のモノローグと合わせて対になっているので、pair of brand somasと言う方がいいのかもしれません。
このpairで視聴者の「知識欲」、知りたい気持ちをグイグイ刺激します。

ドラマ古畑任三郎は、三谷幸喜の刑事コロンボへのオマージュとするなら、「裏オマージュ」は冒頭モノローグのカタチでヒッチコック劇場に捧げられているはずと書きましたが、
中盤にインサートされるモノローグは、アメリカのテレビドラマ「エラリークィーン」の様式であると何かで読みました。

ホントかな、と早速YouTubeで調べたところ、ホントでした。ドラマの中盤で刑事エラリークィーンが視聴者に向かってカメラ目線で「I got it!」と言って、ヒントを開陳します。確かに、同じだ。裏オマージュ②でした。

三谷幸喜さん、何重にもオマージュを仕込んでいます。さすがです。
ドラマには他にも山ほどの小さい演出上の仕掛けがされていて、これを見つける楽しみも魅力の一つです。
こうして「知識欲」刺激のブランディング沼にハマってしまうわけですね…

古畑任三郎のブランディング、傑出してます。





最後に。

このブログを読んで頂いたあなたは、ブランディング&マーケティングに関心のある方だと思います。

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※ ヒッチコック劇場 「裏窓」「ハリーの災難」「鳥」など数多くのミステリー映画を作ったアメリカの名映画監督、アルフレッド・ヒッチコックがプロデューサーを務めた、アメリカの人気テレビドラマシリーズ。1955年から放映された。
※ ブランドソーマ グローバル調査会社ミルウォードブラウンの南アフリカの会長エリック・デ・プレシスが打ち出した考え方と造語。ひとがブランドを意識下に想起する際に、それに紐づいていくきっかけとなる明確な音声、映像等のマークがある、それをブランド・ソーマと呼びたい、という説。
※マーフィーの法則 最悪の状況を想定すべしと言う考えを、自虐的かつユーモラスに表現した経験値測的な表現集。有益なものに、「洗車し始めると、雨が降る」「トーストを取り落とすと、必ずバターを塗った側が下になる」などがある。LOL
※ マレー的に言えば アメリカの心理学者マレーは、ひとの本能から生まれる消費者の動機を研究して、39種類もの欲求リストを作成しました。そのうちのひとつが、「認知欲求」で、知識を得たい、理解したい、好奇心を満足させたい、という根源的な欲求です。

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