
エンジニアキャリアというか働き方というか生き方
こんにちは、すみともと申します。ユビーというヘルステック系スタートアップでソフトウェアエンジニア(社内ではSWEと略されています)をしています。最近はブログとかは全然書いてなかったので(社内のパブリックリレーション担当にちょっとくらい書いてくれとせっつかれたから)久しぶりに書きます。
僕は採用の側面でカジュアル面談という形でいろんな方とお話させていただくことが割と多いのですが、その中でキャリアというか働き方というか生き方を聞かれることがあります。今回はこの辺りの話を徒然無く綴っていきます。
何が好きか
「何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ!」といいますので好きなもの/ことを挙げますね。基本的に手を動かして何かを作ってたり、仕組み的なものを考えてるのが好きです。ここ数年は仕事に集中しててあまりできてないですが、CADや電子工作でロボット作ってたり、その前はSQLエディタとかゲームとか作ってました。塗装は場所が無いのでパチ組みですがガンプラとかも好きです。
働くことにどう考えているか
起点としては「働かないとご飯食べれないよね」です。また数十年前の「仕事とは耐え忍び40年間会社に尽くすべき」という価値観には拒否感があります。なので技術を軸足に仕事をしながらご飯が食べれたらなと考えています。でも、なんだかんだで十年以上は働いていて、仕事を経て繋がった人達と働けるのは楽しいので、普通に悪くないとも思っています(ロングスリーパーなので朝起きるのだけが辛いですが)。
「好きなことを仕事にするなんて甘えてる」的なツッコミもあるかもですが、僕がプログラマとして仕事を始めた十数年前は労働者派遣法まわりの整備がロクスッポされておらず、労働環境や給与面がいろいろアレだったので今とは状況が異なることについてはお察しください。
これからどうしていくか
これから自分のキャリアパスをどうするかですが、自分でもよくわからないです。世間的にはエンジニアリングマネージャーとかVPoEとかあるのかもしれないけど、それらを専任でやるモチベーションは薄いと感じています。僕は技術職にしては比較的マネージメントの動きをすることが多いと自覚してるけど、それをするのは自分がやろうとしてることを進めるのにマネージメントをした方が早い場合があるからです。
過去に優秀な技術者が凡庸なマネージャー職に昇格し、結果として事業が先細るのを何度も目の当たりにしました。自分が従来型の昇進をするとそれを地で行くでしょう。なので自分の能力やWill(こうありたい)を軸に、世の中の情勢とかと合わせて考えていきたいです。
役職ってなんなんだろうね
ソフトウェア開発の界隈を見ているといろんな役職(や職能)があるよね。一口にソフトウェアエンジニアといってもWebエンジニア、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、モバイルエンジニア、インフラエンジニア、SREエンジニアとか。それ以外だとプロジェクトマネージャー、プロダクトマネージャー、プロダクトオーナー、システムエンジニア、プログラマー、テスター、QAとかあるよね。開発から離れると、営業、カスタマーサクセス、ユーザーサポート、コンサル、バックオフィス、人事とかあるよね。
適当にたくさん名前を挙げたけど、同じ名前でも異なる組織では違う役割を持ってることが多いよね。そう考えると当然のことではあるけど役職に厳密な決まりは無いんだよね。フロントエンジニアがバックエンドを作ってもいいし、モバイルエンジニアがインフラを構築してもいい。でも実際にそれをやると組織では混乱が生じる。どの役職が何をすべきかが決められてるから。
じゃあ、どの役職が何をすべきかがなんで決まってるのかを考える。どんな組織も最初は小さい。そこから事業が育つに従って人が増えていくけど、人が増えると意思決定や誰が何をやるかのドメインを整理しないと収集がつかなくなる。だから役職を分け始める。たとえばフロントエンジニアとバックエンドエンジニアは最近では分けられてるけど、十数年前はWebプログラマとかWebエンジニアと呼ばれてたと思う(異論は認める)。営業職でもコンサル的な立ち回りをする人やカスタマーサクセスといった細分化がされているので、似た感じだと思う。そう考えると、事業が育つに従って役職が分化(※)していくんだろう。
※:元は生物学用語で幹細胞が分裂してそれぞれの機能に変化してくこと
役職の名前が何故ついているのかを考える。これは深く考えてないけど、対外的なことを考えると名前がついてないとわかりにくいからだろう。それこそ、組織が成長する上で転職者は必須であり、わかりやすい名前がついてないと募集も掛けれないですからね。
役職がどのように分化するかを考える。同じ役職名でも組織をまたぐと期待されることが違う。それが指すことは役職に含まれる責務や役割が異なるのだろう。たとえばWebエンジニアをフロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアに分割するとき、APIのインターフェース決めはどちらの役割にするのかとかありそう(とはいえ厳しくすると不和がでそう)。なので分化するときは責務や役割で切れ目ができるのだと思う。
そう考えると、いま存在する無数の役職や職能、職責とかって、いろんな組織が歴史上で成長した結果としてあるものだと思う。なので既存の役職とかに自分のWillや将来像がマッチしないなら自分で作ればいいと思う。ただそれは既存の出来上がった組織の中に作るというより、まだ分化していない組織を成長させて行く中で作ることになると思う。
トップダウンとボトムアップ
トップダウンとボトムアップを考える。いきなり違う話が来たみたいになってるけど、組織の分化の仕方の話です。
トップダウンの組織はトップの人の能力が高ければ、いろんな役職を一人で設計して人をアサインするので効率的に回せる。裏を返すとトップの人がしくじると、それはそのまましくじりになる。トップの人が全てを満遍なく見れる最強の人ならこちらのほうが効率的だと思う。しかし残念ながら僕はそれを完璧にできる人のところで仕事をできたことはない。
ボトムアップの組織は組織内の個々のドメインの人達が役職を分化させていくので比較的適した分化が行われる。もっとも局所最適になりやすいクリティカルな弱点があるので、それに対する対策は別途必要になる。
ユビーの話で言えば、ユビーはボトムアップ方式を採用していて、権限委譲(本稿でいう分化)はホラクラシーというフレームワークを用いています。そして局所最適への対策としてはOKRというフレームワークを用いています。
もちろんボトムアップの組織で働いていると、自分にそれなりの量の暗黙的な期待や役割が出てくるので大変ではあります。だけど、それらを明確化して切り出していくことで実質的に新しい役職(ユビーの中では役職という言葉は使わないけど)を生み出していってる感が楽しいです。
お金の話
話を働くことに戻します。お金の話も大事だね。お金が無いとご飯食べれないもんね。「エンジニアの給料はもっと上げるべきだ」という話はtwitterとかでもよく挙がる話題だと思うけど、これ自体の是非についてはここでは触れない。
僕は自分のやってることが事業全体を通した収益として妥当な取り分になってるのかなというのはときどき考える。そりゃ自分が多めに貰えるポジションにいたら短期的には嬉しいかもしれないけど、その歪さを改善できない組織だと、いずれ歪が溜まって瓦解するので不安になる。たとえば技術職を冷遇しすぎて人材流出に繋がり、技術力が下がって傾いた会社もあれば、逆に厚遇しすぎてお金にならないものをたくさん作って傾いた会社はどちらも聞いたことあると思う(異論は認める)。
なので一人の人の生存戦略として僕は企業を見るときに、その企業の収益モデルや事業規模、組織に対し、その辺りのバランスが崩れてないかは気にするようにしてる。この辺りはカジュアル面談で話を聞くとなんとなく雰囲気が掴めます。とはいえ「売上はすべてを癒やす」ともいうので杞憂の可能性もある。
僕も技術職なので技術力で勝負はしたいし、技術力に応じたお金は欲しいなって思う。でも技術力だけでお金を貰えるとなるとそれはそれで大丈夫かな?ってなる。もちろんグローバルな企業で規模が極端に大きくて、一部に技術力を追求する部署があるとかならありそう。でもそれはどちらかというと研究者に近しいものになりそうだから、僕とはWillが違いそうなのでよくわかんない。
世の中のお金の流れとして例外的なものとしてあるのはスタートアップ企業への投資だと思う。これは未来のビジネスモデルを作る性質上、事業収益と切り離されてるんだよね。でも他人のお金かというとそれも違う。スタートアップで働く場合は一般に自分の市場価値から計算するとお給料は下がる。でもそれはなんらかのインセンティブの形で自分自身のお給料を削ったものが入っていることの裏返しなんだよね。それがなければタダのやりがい搾取になっちゃうしね。投資されてるし、間接的に自分のお金も入ってるから、やれることはなんだってやる。まぁスタートアップで働いてると命を削る感はある。でも自分のWillとあっている分には良さそう。もっとも自分の能力以上のことはできないし、身体壊すような働き方はしないよ。それは自分も望まないし、それを望むような人達とは働きたくないからね。
スキルと方向性
最近のソフトウェア開発を見てると単一技能でどうにかなるような世界では無くなってと感じる。僕自身、数年前まではモバイルアプリエンジニアとして一線にいたつもりだけど、それだけで事業は進められない。それはモバイルアプリエンジニアがバックエンドを触るとかいう話ではなく、そのプロダクトを使うのは誰か、関わっている人達にどんな人がいるのか、ユーザーサポートの人もいれば、それを売り込んでる営業やマーケの人、コンサルの人とかいっぱいある。事業目線とか視座って言葉を使うと巷のビジネス書みたいになっちゃうけど、それでもできるだけ広く見渡して事業に価値を持たせる立ち回りができないと、回るものも回らないなって思う。
よくこういう話をすると「エンジニアがそういう立ち回りを求められるのは組織設計が悪い」とか「役職や役割が整理できてないのが問題」って言われるけど、それを解決するのも人なんだよね。どこかから超スーパーウルトラハイパーすごい人がやってきて全てを決めてくれるとか、そんなことはないんだよね。だから自分たちでやらないといけないし、できるようにならないといけない。自分一人だけじゃなくて、メンバーと時にはブツかり時には協力して、課題を解決していける組織にしないと回るようにはならない。
なので、一極集中するのではなく、いろんなことをやって複合スキルを身につけていくのが大事かなって思う。その上で自分の持ってるスキルセットを活かせるところで働くのが良さそうと、僕は考える。
人も組織も変わるよね
世の中に変わらないものは存在しないと思う(ごめん嘘ついた。質量保存の法則とかエネルギー量保存の法則とか定理とか公理は変わらない。いやそういう話ではなく)。少なくとも営利企業は売上を上げようとすれば必然的に人が増えるし、そうじゃなくても人が入れ替わる。テクノロジーの話で言えばブレークスルーがあるたびに勢力が代わり、組織構造とかも変わる。ピープルウェアという1987年に出版されたトム・デマルコ&ティモシー・リスターの本でも、第何版かで電子メールやメッセンジャーといったテクノロジーの登場に合わせて加筆修正が入ったと聞く。そうやって人類は少しでも良くなる方向に物事を変えて行く。
成功しているスタートアップを見ていると、やがてメガベンチャーと呼ばれる存在になり、その後、大企業と呼ばれてたりする。組織が大きくなるにつれて人が増え、役職がどんどん分化していく。この分化は基本的に役職の役割が少なくなる方向に進む。
自分の一人の労働者として捉えたとき、人によって異なると思うけど、自分が就く役職の役割がどのくらいが丁度良いかがあると思う。あと自分自身の考え方が変わることだってあるしね。だから組織は変わるものなので、自分と組織は時間が経てば普通にズレる。それは普通に転職をする時期だと思う。そこで無理に転職せずにミスマッチしたままズルズル働くのは、自分にとってもパフォーマンスが出ないし、組織にとってもメリットが無いから、誰も幸せにならないと思う。なので学生時代の自分は「転職せずに一生働き通す美徳」というのは良さそうかなと思ってたけど、今の自分は別の価値観になってる。
今の自分の趣向としては「その場その時流で自分の持ってるスキルセットやWillで合う組織を探して移動し、コミットしていく」にしてる。こうかくと「ジョブホッパー」っていわれそうだけど、ブラ下がって甘い汁を吸いたいわけじゃないよ。そりゃお金は欲しいけど、自分の仕事に不相応なお金を貰ってると、往々にして自分の生きる力が失われるので、そっちのほうが不安。だから自分のやれることはやるし、それが事業を育てることにつながってると信じてるし、任せられるよう働いていたい。
まぁそんな考え方をしてるので、僕は一つの会社に何十年も居ないだろうなって思う。仮に居たとすると僕自身も変わった上で組織も代わり、偶然の一致でそれぞれが変わった先で一致してる場合だと思う。
世の中も変わるよね
日本に関して言えば高度経済成長期に作られた年功序列&終身雇用の文化(これ自体は戦後の復興からの経済成長の理に適ったものだと思うので否定はしない)からの、バブル崩壊からの長期不況に加え、世界金融危機のフルコンボにより、いろいろ人の働き方や生き方に硬直してた部分はあるとは思う。この辺りの硬直していた問題については僕も直撃世代ではないにせよ、それなりに割を喰わされて辛かった。だけどここ10年くらいはスタートアップという形で新しい企業が産まれ、それらがメガベンチャーを経て大企業になる話を普通に聞くようになってるよね。なのでこれからは新しい産業が産まれて育ち、いろんな世の中が変わって行けばいいなって思う。
新しい産業が産まれるということは、古い産業が廃れることはニアリーイコールだと思う。それは変化についていけない企業が潰れることを意味する暗い面もあると思う。でも企業が潰れてもそこで働く人達が死ぬ必要は無いと思う。2000年代中頃までは転職市場も無く、新卒を逃すと即座に人生が詰むという辛い時代だったけど(僕も詰みかけた)、現在では転職市場が活発なので即座に詰むことは無くなってると思う。ちなみに僕自身が前職でWantedlyにジョインしてたのはこの辺りを改善したいWillがあったのもある。だからこれからは多少の課題はでるだろうけど、それを解決しつつ、良い方向に世の中を変わればいいなって思う。
「変わればいいな」っていうと他人事みたいだった。ユビーのメンバーの某氏の言葉を借りると「お前がやるんだよ」なので、僕がどこまでできるかはわからないけど、やれる範囲でやろうと思う。今はユビーにいるし医療業界を良くしていきたいと思ってる。
一周回って自分の働き方と生き方
とまぁ徒然無く綴りましたが、僕は一周回って技術を軸足に置きつつ、事業を作る立ち回りで働いていくと思います。その中で今は存在していない役職や役割、キャリアみたいなのを自分で創っていけたらと考えています。そして得た知識や経験を活かせるところ、その上でそれらを必要としてるところを移っていくのかなと思います。一人のアラフォーの生存戦略としては向こう20年くらいは大きく外していないと信じたい。もっとも外れていそうと気づいたら路線変更します。
終わりに
技術を軸足に置きつつ事業を創っていくと本稿で何回か書いたけど、いま僕の所属しているユビーはそういう働き方ができるところです。この記事を読んで僕の働き方についてもう少し話を聞きたいとか、ユビーに興味を持たれた方にはご説明できますので下のmeetyにて「話したい」を押してもらえればです。雑多な長文ですがここまで読んでくれた方、ありがとうございました。
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