たかが壁掛け時計。されど。

夢遊病者のように物を探し回っていた、あの頃。
というと大げさな表現かも知れないが、
結婚が決まって、家が決まって、
さぁ、新しい生活用品諸々を揃えねば!と
鼻息荒く買い物をしまくっていた、あの頃のこと。2年前。

一人暮らしも10年して、転職して収入が減ったのと、
もう一人がつまんない、という色々な思いがあって、
あまり関係性は良くないが、両親の実家に戻った。
最初は親せきの家に居候している気分。

だが、経済的に背に腹は代えられぬ、ということで、
なんだかんだ暮らして10年。
後半の4年くらいは婚活で、付き合ったり
別れたり、いろいろあった。
で、ようやくこの人!という出会いがあり、
家を出て引っ越ししたのだった。

面白いことにというか不思議なことに、
自分で作れる自分の家庭、ということになると、
俄然、こういうインテリアにしたい、
こういう食器を揃えたい、と
もりもり欲が湧いてくるのね。

実家で使われていた白や青の模様の食器と
真反対のように、こげ茶や濃紺、緑系、つまり
白じゃないアースカラーの食器を買い求めた。
器が素敵だと、料理も美味しく見えるというのは、
外食していて学んだので、
それを言うと、母親は「悪かったわね」と言った。

別に皮肉で言っているわけじゃないし、
批判しているつもりもないので、多少ビックリした。
母親とは趣味が違うだけなのだ。

確かに白い食器にはうんざりしていたけど、
実家は母の(父もいるけど)お城。
家を出て再び戻ってきて居候して、
勝手にまた出ていこうとしている身分の私が、
母親の城について、文句も何も言える立場ではないのだ、
と思う。

だから、別に母の趣味に反発してとか、
反面教師にして、自分の城を整えようとしている
つもりは全く無いのだよ。

当時は、熱に浮かされたように、
インテリアショップや食器フロアやLOFTや
unicoやKEYUCAや無印良品など、
もちろんAmazonでも探しまくった。

新居は築数は古いけど、リフォームしてある
賃貸アパートの2階。
初めての結婚、同棲。我が家に心休まる、
インテリアにしたい。
ということで、探し回っていたリビングの
壁掛け時計。

とある雑貨ショップで、ブラウン色の木の枠の
小ぶりな丸型時計を見つけて、これだ!と買った。
仕事もフルタイムで働いて、新居に揃えなきゃいけない
生活のあれこれもあって、
本当に当時は頭をフル回転させて、疲労困憊していた。

そんな必死な思いで見つけて買った時計が、
2年経って、時間が正確でなくなっている。
最初は電池の問題かと替えたりしたが、
どうもいけない。遅れている。

初々しい、まだ慣れない夫婦二人暮らしが始まって、
毎朝、リビングのこの時計を見て行動していた。
この時計が正確に時を知らせてくれるから、
今までの仕事中心の時間と、夫婦二人の生活時間を
この時計を見ることで、どうにかやり繰りできていたのだよ。

仕方ないけど、新しい時計を探すしかない。
Amazonやらネットで探してみたが、
意外に欲しい22センチ直径の時計が無い。
いや、あるけど、分の表示がなかったり、
数字の強調が嫌だったり、色が欲しいのが無かったり。

毎日見るものだから、あまり主張の強くなく、
だけど、正確に時を知らせてくれて、
我が家のリズムを作ってくれる時計。
アナログ時計が良い。
そんなのをまた、夢遊病者のように
熱に浮かされた人のように、探し回って見つけたい。



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