【今日の一篇】Edgar Alan Poe - The Raven

推理小説の元祖として知られるポーは、特に欧米では詩人としても高い評価を受けています。日本では江戸川乱歩が知られていることもあり、推理小説のイメージが強いですが、抒情詩人としての面は見過ごされがちです。

今日紹介するのは詩人としてのポーの名を一躍高めた傑作の「大鴉」


まずは内容を軽く紹介しましょう。

この詩は「レノーア」という名の愛する人を亡くした男の一人称による語りで進められる物語詩で、彼が死別の悲しみを紛らわせるように深夜読書に耽っている場面から始まります。

主人公は大鴉との超自然的な出会いと語らいを通じてその悲しみを深めていき、やがて自滅するように追い詰められていきます。
これを恋人を失った男の狂気とみるか、あるいは愛する人を失った人物の普遍的な心理が大鴉との対話によって増幅され、否応なしに絶望と悲しみの淵に追い立てられていくとみるかは読者次第でしょう。

大鴉が意志を持って、あるいは何かの意志に操られて主人公と対話しているのかは明かされません。幻想的でありながら現実との境目も曖昧になっているような全体像が読み手を引き込んでいくのかもしれません。


この物語詩は、是非リンク先などで原詩を味わってほしいと思います。
ゆえにここでは細かい内容の紹介はしません。

やや長いですが、使われている言葉に特に分かりづらいものはなく、意味を調べながら、あるいは出版されている和訳や訳注を参照しながら読めば原文でもじゅうぶん物語を理解できるでしょう。

そしてこの詩は、ポーの詩はどれもそうであるようにとても音楽的で、一定のリズムが一貫して全体を流れています。
全体を通して響き渡る脚韻や韻律を意識しながら、あるいは声に出して読み上げることで大きな感動を得られ、ある程度英語が読める人であればポーの作詩の技術の高さがよくわかるのではないでしょうか。

同じフレーズを二度繰り返したり、連続して頭韻を踏んだり、同じような行が何度も続いたりするところはあるいはくどいとも感じられるかもしれませんが、そのどれもが確かな効果を持っているところがこの作品のすごいところでもあります。

このように表面上の意味だけでなく、言葉そのものが紡ぎ出す特別な感情を喚起するところがポーの感性の優れたところであり、ストーリーや構成の上手さという点では推理小説や多くの論評も書いていた彼の特別に明晰な頭脳があってこそだったのではないでしょうか。
そういう詩の全てを味わうために、原詩で読むべきだと考えるのです。


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