誰かが変えてくれると思うその前に歌うのさ

音楽というのはその時代の音が鳴り、言葉が紡がれることに大きな意味がある。先日取り上げたThe1975にしてもTame Impalaしても、 The Weekendにしても2020年の音が鳴り言葉が紡がれている。こういった側面は、日本のポップミュージックよりも海外のポップミュージックの方が顕著に現れているような気がする。とはいえ、映画に比べ音楽は言葉の壁によって、一聴しただけでは作家の伝えたい意図を汲み取ることができない。やはりポップカルチャーを堪能するには英語の重要性を痛感する。

とはいえもちろん日本にもその時代、時代に沿った素晴らしいポップミュージックを提供してくれるアーティストはたくさんいる。

GEZAN / 東京

自分たちが立っているこの場所が、如何に不安定で、不確実で、不誠実かを思い知らされ、分断が広がっていくのがいよいよ身近に感じられるようになり、なにがリアルかわからなくなった2020年に、これだけはリアルだと信じられる音と言葉。全身に刺さり続ける6分14秒。

"国に帰れ"と叫ぶ
悲しき響きが起こしたシュプレヒコール
肌の色違い探し
血眼の似たもの同士のフェイス
吐いた唾は返る 必ず
Hate is back to you 必ず

TRICERATOPS/ スターライト スターライト

意外かもしれないがトライセラトップスから一曲紹介。2014年リリースのこの曲は曲調、リリックともに10年代の空気感がよく表されていると思う。印象的なリフ一本で大きな抑揚はなくとも、淡々としたビートの中に、エモーショナルを感じる。ジャンルは違えど、その空気感は同時期流行ったトロピカル・ハウスとの親和性も感じられる。よ

ハッピーエンドが好きな僕などは もう古いのかなぁ
後味わるい映画と近未来 重ね合わせて oh oh oh oh

ポップカルチャーがその時代の映し鏡となった10年代、映画もその枠を漏れず、ただ楽しくハッピーエンドが全肯定される時代は終わってしまったのだ。そしてこの曲のパンチラインのこの部分。ロックスター不在と言われるこの時代、その声が届かなくなったのが一つの理由かもしれない。

世界は今日も涙を流すから サプリを飲ませよう
政治家のsmile ロックスターのrhyme 威力はどちら?

今日はこんな風に、音楽の話をしてみた。僕は、音楽が人に及ぼす影響というものに興味がある。これを書きながらいろんな思いが込み上がってきた。最後に音楽評論家の田中宗一郎氏の大好きなこの言葉で。

何度でも言おう。ポップの役割は果てしなく広がる無知と無関心の地平に語りかけることだ。まったく言葉の通じない他者に語りかけようとする意志だ。そのためにもっとも大切なことは、その無知と無関心の荒れ地には、必ず知性と聡明さと良心が潜んでいることを誰よりも信じること。ポップに幸あれ。

今日の1曲


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