数の概念を教える
子ども家庭センターの心理士さんは、「数字というのは、単に数ということだけではなく、順番とか社会生活に関わってくること」だと言っていた。時間もお金も位置も、数字を理解していることが必要になってくる。
あきひろは、「1、2、3、…」と数字を読むことができていたので、数字と数を一致させることから始めた。
1から5までの数字が書いてあるカードを並べて置き、端から1枚ずつ指差しながら、「いち」「に」「さん」「し」「ご」と読んでいく。それが確実にできたら、「5」のカードを裏返して同じように読んでいくと、「いち、に、さん、し、ご」と数字が書いてない5番目のカードも指差して「ご」と言ってしまう。
その次は「4」と「5」のカード、というふうに、裏返しのカードを増やしていき、最終的には何も書いていない5枚のカードを指差しながら、「1、2、3、4、5」と言うことができるようになった。
次に数字と数を一致させる練習だが、点を数えることができなかったので、あきひろが知っている物の絵を数えることから始めた。
紙にリンゴの絵を3つ、ミカンの絵を2つ描いて「リンゴはいくつ?」と聞き、一緒に指差しながら「いち、に、さん」と数えて、「3」と書かれたカードを取る。「ミカンはいくつ?」と聞き、「いち、に」と数えて「2」のカードを取る、ということを繰り返した。
そうやって、紙にリンゴを3つ描いたものと数字の「3」のカードを一致させるということを、1から5までの数でやった。それが確実にできるようになったら、物の絵ではなく点を描き、点が1つのカードは「1」、2つのカードは「2」と、合わせられるようになった。
また、積木を使い、私が「3個ちょうだい」と言って、あきひろが積木を3個手渡しして、「3」のカードを取るということもやった。カードの絵でも、点でも、実際の物でも、数と数字が一致するようになった。
さらに順番も教えていった。リンゴ、ミカン、イチゴ、バナナ、ブドウの各カードを横1列に並べて、「1番目は何?」と聞かれて、リンゴを指さす、または「りんご」と言う。「2番目は何?」で、ミカンと答える、ということができるようになり、数というものが身についていった。
自閉症の人は数字に強いと言われているが、あきひろは確かにそうだと思う。数字はかなりの部分で、持っている言葉の少ないあきひろの理解の助けになっている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?