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灰色にまつわる楽曲って思いつく?―リストとドビュッシーのあの曲!

日本では3/3に桃の節句がありましたね。一方、キリスト教の行事では3/2に「灰の水曜日」がありました。
そこで今回は「灰の水曜日」とは何かを解説した後、「灰色」にまつわる楽曲とその作曲者をご紹介します!

(こじつけですが(笑))


灰の水曜日

灰の水曜日とは、カトリック教会の暦において、復活祭の46日前の水曜日のことです。

「復活祭」は日本では「イースター」として知られていますが、キリスト教で最も重要な祭典の一つですね。

復活祭 (イースター)

キリスト教の中では、以下のように考えられています。
神の子であるイエス・キリストが十字架にかけられ、処刑されます。しかし、キリストは事前に「3日後に復活する」と予言しており、実際に3日後に復活しました。
その奇跡の復活を記念した祝祭が復活祭です。通常、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」が復活祭となるようです。

この、復活祭(=イースター)の46日前の水曜日が「灰の水曜日」です。

「灰の水曜日」から「復活祭の前日」までは「四旬節」と呼ばれます。
四旬とは40日のことですが、キリスト教の考えでは四旬を日曜日を含めずに数えております。そのため、日曜を数えた日数としては前述した通り、46日前となります。
この四旬節の間は、キリストの受難を想起し人間の業を償うため、食事の節制と祝宴の自粛が行われます。

そんな四旬節のスタートの日が「灰の水曜日」なのです。


灰にまつわる楽曲① リスト《灰色の雲》

Wikipedia「フランツ・リスト」

フランツ・リストは、1811 (江戸時代・文化8) 年にハンガリーで生まれ1886 (明治19) 年に亡くなりました

ハンガリー出身のクラシック作曲家の代表的な人物ですね。
超絶技巧と呼ばれるめちゃめちゃ演奏するのが難しい楽曲を作り、自身で演奏した人物としても有名です。
また、リストの演奏会では熱狂的なファンが興奮のあまり失神した、などという逸話も多く残されています。

一方、超絶技巧のピアニストとしての活動が落ち着いた後、リストは作曲活動と指揮活動に専念しました。
ワーグナーのオペラ《ローエングリン》の世界初演を指揮したり、自身も「交響詩」と呼ばれる新しいジャンルの音楽を作曲したりしていました。

リストがワーグナーと同世代であることは、以前に「ワーグナーと同時代の芸術家」というnote記事で述べました。興味ある方はこちら↓もどうぞ。
note記事「ワーグナーと同時代の芸術家」


そんなリストが1881年、すなわち亡くなる5年前に書いた作品が

ピアノ曲《灰色の雲》S.199

です。
暗い雲、あるいは不安な雲と訳されることもあります。


聴いてみるとわかると思いますが、超絶技巧で「すごい!!」という曲風ではありません。
灰色や暗いという形容詞がぴったりな落ち着いた曲風でありながら、「あぁ、ワーグナーと同世代だよなぁ」と感じさせる和音が響く楽曲です。

(個人的には、時々光が差すような音があるところも素敵で、灰色だけど黒ではなく、とても美しいなぁと感じさせる楽曲だと思います。
この記事を書くために調べて初めて知った楽曲なのですが、とても気に入りました。)


灰にまつわる楽曲② ドビュッシー《白と黒で》

wikipedia「クロード・ドビュッシー」

クロード・ドビュッシーは、1862(江戸時代・文久2)年にフランスで生まれ、1918(大正7)年に亡くなりました。


ドビュッシーといえばやはり、交響詩《海》や交響組曲《夜想曲》の雰囲気や特徴から、音楽史上「印象派」音楽の幕開けとされる人物ですね。

wikipedia「印象・日の出」

すなわち、
美術史上の「印象派」の画家であるモネの《印象・日の出》の音楽史版が、ドビュッシーの交響詩《海》や交響組曲《夜想曲》であるとされています。

ちなみに、ドビュッシー本人は印象派と称されることが嫌だったようですよ。


さて、そんなドビュッシーが1915年に書いたのが、
2台ピアノのための《白と黒で》
です。

この楽曲も、ドビュッシーが亡くなる3年前に作られました。


この楽曲の解説として、ピティナ・ピアノ曲事典の解説を引用しましょう。

「この〈白と黒で〉について、あまり考え過ぎないで下さい……この作品は、単に、ピアノの響きから、その色彩と感覚を引き出したものにすぎないのです。もしあなたが賛成してくれるのなら、それはベラスケスの〈灰色〉のようなものだと申しておきましょう」。これはドビュッシーが友人に宛てた一節である。
1914年の第一次世界大戦勃発により強い印象を受けた彼が、一年余りの沈黙を経て、音楽的な思考の再発見と自ら述べるほどの、激しい作曲衝動の内から生み出したのがこの作品である。そのような背景からか、ドビュッシーのフランスに対する愛国心が独自の手法を通して音になったと言えよう。

ピティナ・ピアノ曲事典より


この楽曲は3つの小品から構成されており、それぞれの冒頭に詩の一節が書き込まれているそうです。

第1曲 興奮して
「その処にとどまり、踊りを踊らないものは、その不快な気持ちを、低い声でつぶやく」
(グノーの〈ロメオとジュリエット〉からの一節)

第2曲 ゆるやかに暗く
「公子よ、エオルスの奴隷となるか、グラウクスの支配する森で、さなくば、平和と希望の主となるか、フランス王国に、悪しき法をもたらすのは、その徳を持つに値しない」
(フランソワ・ヴィヨン〈フランスの敵に対してうたえるバラード〉から)

第3曲 スケルツァンド
「冬よ、汝は不快な奴輩にすぎない」
(シャルル・ドルレアンの詩からの一節)


舞曲風の華やかな1曲目で始まり、陰鬱な影を描く2曲目、そして最後にユーモアで笑わせるような3曲目から構成されています。

なかなかに聴きごたえのある楽曲です。


最後に

今回の記事では3/2の「灰色の水曜日」にちなみ、灰色にまつわる楽曲を紹介しました。

2曲ともあまりメジャーな楽曲ではないかもしれません。けれども、とても美しい楽曲ですので、ぜひ隙間時間に聴いてもながら聴きでも、一聴していただければ幸いです。

もしよろしければ、サポートいただければ幸いです。 (ポイっと50円、コーヒー代100円、カフェ代400円、お昼代800円…などなど) 今後の継続した活動の励みになります!