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異世界タクシー・勇者と仲間達を乗せて・第二話(タクシーと森)

眠い目をこすりながらベッドから起きると
、服に着替え階段を降りる、廊下を歩くと食堂から、クレイとアガレストと騎士達の声が聞こえてきた。胃の中に食べ物を押し込む声と、何かを話す声、うるさいグループの中に入るのは苦手意識はあるが、意を決して食堂の仲へ入ると、全員がこちらをチラッと見て、食事を続ける。適当に空いてる席に座り、運ばれてきた食事のプレートを受け取ると、右に置いてあるフォークを使いベーコンと野菜を一緒に刺し、口に運ぶとむしゃむしゃと食べる。隣にクレイが座ると「陽介、ホントに大丈夫か?」フォークを皿に置くと「何が大丈夫って、ゴブリン討伐か?あぁ、大丈夫だよ。多分、」スプーンでかぼちゃのスープをすくい、ズズズと飲む。クレイの顔は不安そのものであり、何か言いたそうだったが、その口にパンを入れて不安と一緒に飲み込む。陽介とクレイのいる場所から離れてたところで、なにやら作戦会議が行われていた、それを遠目で見ながら食事を進める。
10分後、朝食を食べ終わった戸川・陽介は席を立ち、食堂を出ようとするとアガレストが、近づき「おい、今日は頼んだぞ。」ぶっきらぼうに言うと離れていく、返事をする前に離れていくアガレストの背中に「わかりましたよ」と小声で言うと
急いで部屋に戻ると、机に置いた、クレイにもらったナイフをポケットにしまい、身支度を済ませると、部屋のドアを開け、クレイが入ってきた。
「そろそろ行くぞ、準備はいいか?」戦闘態勢に
入ったクレイに比べ、軽装な格好の戸川・陽介は
村の道具屋で、タダでもらった旅人の服を装備していた。「なぁ、似合っているか?クレイ」「あぁ、似合ってるぞ。」「よし、行こう。」ドアを閉めると、廊下を歩き階建を降りると、騎士達がゾロゾロと歩いて、外に出ていく。宿屋の庭には100人以上の騎士達が集まっていた。先頭にはアガレストいて、騎士達を鼓舞する。「お前ら、今日は待ちに待ったゴブリン討伐の日、1番多くゴブリンを狩った者には、国王がじきじきに褒美がでるらしい。」その言葉に騎士達はウォーと声を上げ、
ボルテージが最高潮に達する。「行くぞ。お前ら」
馬に乗るものと歩く者、クレイと戸川・陽介も後を追うためタクシーに乗ろうとするが、ドアをバタンバタンとさせ2人を拒否する、突然のことに尻もちをつく
クレイと戸川・陽介「何勝手に乗ろうとしてんだよ。お前らは歩いていけよなぁ。」汚れた場所を
手で叩き、立ち上がると運転席に滑り込み、車のKeyをさして回す。「おい、お前なにをした。身体が動かない。」ハンドルを握り、暴れないようにブレーキを踏む。「クレイ、早く乗れ。」助手席のドアが開くと、すぐさま乗り込むクレイ、ドアを閉め、戸川・陽介はブレーキペダルを踏みながら、シフトレバーをPからDに変える「よし、いくぞ。しっかりと掴まっていろよ。」ブレーキペダルからアクセルペダルを踏む。砂煙をあげ村を出ると、更にスピードをあげ、一本道を走行、数分後アガレストの集団に追いつくと、ガチャガチャと金属音がぶつかり合う音が、耳を不快感へと変わる。
1番先頭にいるアガレストは、眉間にシワを寄せ
真剣な眼差しで、まっすぐゴブリンの巣窟がある
方向を見ていた。「なぁ、まだ到着しないのか。」
窓から首を出し、馬に乗っているアガレストを見上げる戸川・陽介、真っ直ぐまえを見たまま「もうすぐ、奴らの巣窟に到着する。あの森を抜けたらなぁ。」指を指した方角には薄暗い森が見えるが
何やら森の中で蠢く物体がいた。1つや2つじゃない、列をなして動く謎の集団が。それを見た瞬間ガタガタと身体が震えだす。逃げろ、早く逃げろと本能が知らせてくる。「おい、あれは何だ?あれはモンスターじゃないのか?あんなところを行くのか?おい。」クレイが叫んでも無視を決めこむ、業を煮やした戸川・陽介はドアを開け、外に出ると、アガレストの乗る馬に小走りで近づく。
並走しながら言う「おいアガレスト、ホントにあの森を抜けるのか?」「そうだが。それがどうした?何か文句があるのか?」ぶっきらぼうに言う
アガレスト「本当にあの森を抜けるのが。あの森以外の道はないのか?」フッと鼻で笑うとこちらを見る。「あの道以外ない。それならこれを使え。」皮の袋から小さな小瓶を投げる。慌てて受け止めるとその小瓶をジロジロと見る。「これ何が入ってるんだ?」「聖水だぁ、それを身体に振りかければ、あいつらはよってこない。」そう言うとアガレストが乗る馬のスピードは加速していく。何か言いたそうな戸川・陽介を置いて、タクシーが横に止まるとクレイが窓から首を出す「おい、どうした?」小さな小瓶をクレイの目の前に出す。「これなんだ?透明な液体だけど。」小瓶をひったくると聖水を頭に振りかける。ドアを開けタクシーにまんべんなく振りかけると、戸川・陽介の頭に振りかける「おい、やめろよ。」聖水をかけた頭はびしょびしょ「これでよし。行くぞ。」クレイは窓を閉める、濡れた頭を軽くはたき、運転席に座りハンドルを握ると「なぁ、聖水ってなんの効果があるんだ?」聖水をポケットに突っ込み、おでこを軽くかく「まぁ、それは見たらわかる。さぁ行こう、遅れるぞ。」クレイに急かされ、ブレーキからアクセルを踏みこむ。最後尾から5分で先頭に追いつくと、アガレストと騎士の集団は足を止める。
「今から森に入る。気を引き締めろ。」一喝すると
剣をゆっくり引き抜くと右手に持ち、アガレストを筆頭に森へ足を踏み入れる。まだ午前中の明るい昼間のはずが、光も差さずどんよりと息苦しいさを覚える空気が、この森を支配していた。
しかも周りを見渡すと、得体のしれない何者かが 、全方位こちらをジッと睨んでいる。
隙あらば、襲いかかってやろうといわんばかりの
血走った目で、周りをを警戒しながらアガレストと戸川・陽介は進んでいく。手入れがされず伸びっぱなしの草をかきわけながら森の奥へと進んでいくと、開けた場所へ出る。数十メートル先で
何者かがモンスターと戦っていた。傍観していたが明らかに劣勢だとすぐにわかった。数人いたがバタバタと倒れ、最後に残った者は必死に剣を振るうがそれも虚しく、数体のモンスターに周りを囲まれ、雄叫びを上げながら拳を振り上げ叩きつける。袋叩きにされ絶命したのを確認したモンスターはこちらを振り返ると、身長3メートルの毛むくじゃらのずんぐりむっくりした猪が突進してくる。すぐにアガレストは、部下に弓矢を放つように命令する。「撃て。」言葉と同時に弓が放たれると弓矢の雨がモンスターに降り注ぐ、無数の矢が
身体に突き刺さるが倒れずに突進してくる。その時、鼓膜をつんざくほどの咆哮が森に響き渡ると、モンスターはなにかに怯えた顔で、踵を返して森の奥へと逃げていく、逃げていくモンスターの後ろ姿を呆然と見ている。「なんだ今のは?」
戸川・陽介はクレイにいうと、「わからん、聞いたこともない。」首を横に振って、アガレストの方を見ると、険しい顔をしていた、さっきの得体のしれない咆哮について、なにか知っているような顔をしていた。部下の1人が話しかけると、ハッと我に返ると「お前達良くやった。もう少しでこの森を抜ける、気を抜くな、いくぞ。」再び、アガレスト一行は動き始める。戸川・陽介はモンスターに殺された遺体を見ていると、胸についているペンダントが視界に入る。気がついたらペンダントを毟り取り開けると、家族の写真が写っていた。
奥さんと小さな男の子と女のコが笑っていた、隣に横たわる遺体と、幸せそうな写真のギャップに耐えられず、ペンダントを閉じると手に握らせる。クレイが後ろからやってくると遺体を漁り始めた、その様子に驚く戸川・陽介はクレイの腕を持つ「何してる?クレイ」「使えそうなものを探している。」手際よく使えそうな物を探しているクレイと、何もせずただ見ているとノールックで何かを投げてくるとそれをキャッチ「それ使えるから持っていろ。」「なんだよこれ?ただの草じゃないか?」紙に包まれた草を不思議そうに見ていると
「これは薬草で、傷ついた場所に塗る、こっちは毒消し草、毒を消す薬、店で買うと高いから、大切に使えよ。」ポンポンと投げてくる草をキャッチ、両手にいっぱいの薬草と毒消し草を持って、タクシーまで歩くと布のリュックサックに無造作に入れ
後ろを振り返ると、クレイは何かを探している
クラクションを2回鳴らす。「クレイ、行くぞ。早く来い。ん、何だこいつは。」緑の液体がフロントガラスにへばりつく。クレイはリュックサックにいっぱい入れた状態でタクシーに走ってくると、リュックサックをトランクに入れ、助手席に座ると、ドアを閉め「すぐに出発しろ、こいつらは厄介だ。早く。」
緑の液体はタクシーの周りを囲み始めていた。
急いで車を急発進するが、緑の液体がタイヤに絡みついて空回りする。「何だ、動かねえぞ。」それを合図にタクシーに飛びつく、緑の液体に無線から叫び声を上げる。「熱い、早く、この緑の奴をどうにかしろ。」シューと音がすると同時に、助手席の窓を開けて丸いボールを落とす、コロコロと転がり止まると、激しい発光を放つ。数秒間、時が止まったかのような雰囲気が流れた。クレイは黒い眼鏡を外すと
窓越しから外を見ると、緑の液体はいなくなっていた。運転席をチラッと見たら戸川・陽介は、発光の眩しさに数分間、目が開けられずにいた。
「大丈夫か?陽介。」「何ださっきの緑の液体は?あとなんだ、あの光は?」ポケットをから玉を取り出し目の前に出す。「あのモンスターはスライム、単体は弱いが、集団になるとかなり厄介で、この玉はライトボールで、スライムの苦手な光を発する。それより急ごう。追いつけなくなる。」わかったのか、わからないのか、そんな顔をした戸川・陽介は再びアクセルを踏むと、タクシーは森へ消えていく。











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