紀伊国の神社観光してきました
夏休みを取って和歌山観光してきました。タイトルとしては紀伊国の観光ということにしています。理由はこの後説明します。
紀伊国の範囲について
熊野市・尾鷲市は現在では三重県に所属していますが、実は歴史的にも紆余曲折があった地域です。この地域は元々一部志摩国でほとんどは紀伊国に所属していましたが、江戸時代の直前にすべてが紀伊国に編入されるなど、微妙に行き来があります。その後も色々あり、明治政府の都道府県制定時も当初は度会県に所属していましたが、度会県自体が三重県に編入されます。その後明治政府による府県廃置法律案では和歌山県が廃止され、大阪府と三重県にそれぞれが編入される予定になっていましたが、その案では熊野三社がある地域は三重県に編入される予定でした。
元々この地域は県庁所在地の和歌山市からかなり離れており、その後に大阪府に編入するより伊勢神宮を抱える三重県が抱えた方がよいと判断されたのかもしれません。そのような状況なので今回は紀伊国観光ということで和歌山県に加えて熊野市・尾鷲市辺りの地域も含めることにします。
和歌山の行き方・帰り方
和歌山への行き方ですが、空港に関しては和歌山県内には南紀白浜空港しかありません。本数も少ないのと、基本白浜観光向けなので今回の観光に使うのは微妙に使いにくいかもしれません。また和歌山市の場合、実は関西国際空港の方が近いので和歌山市に行くなら関西国際空港経由で行った方がよいと思います。
今回は大阪によりたかったので大阪まで新幹線で行ってから和歌山駅まで行き、和歌山駅でレンタカーを借りました。
熊野観光には新宮市を使うのが一般的だと思いますが、新宮市は名古屋駅から行ける特急の本数が非常に少なく、陸の孤島という感じがあります。和歌山市は大阪から簡単に行けますが、それ以外の地域は正直電車だと厳しいです。なのでレンタカーをどこで返すのかという問題が発生します。
今回は尾鷲市まで行く予定だったので、帰りの電車が多い伊勢まで紀勢自動車道で向かうことにしました。伊勢神宮が近かったですが、伊勢神宮は名古屋から簡単に行けるので今回はレンタカーを返すために利用するということで割り切りました。和歌山駅から伊勢までレンタカーで行くルートは電車の本数を考えるとかなりいいルートな気がするのでおすすめします。
和歌山市・周辺
加太淡嶋神社
— 達人 (@catatsuy) August 29, 2022
祭神は少彦名命・大己貴命など。
社伝によれば、三韓出兵の帰途、嵐に遭遇した神功皇后が友ヶ島に無事入港できたことを感謝し宝物を奉納。その後、神功皇后の孫である仁徳天皇が島では不自由と社を対岸の加太に移したのが始まりらしい。人形供養で有名で境内は人形だらけ。 pic.twitter.com/1afbuDuYzj
木本八幡宮
— 達人 (@catatsuy) August 29, 2022
神功皇后が三韓出兵を終えた後、後の応神天皇が武内宿祢とともに当地に上陸(元々この辺りまで海が来ていたらしい)して頓宮を作った跡で欽明天皇の命で八幡宮になったらしい。 pic.twitter.com/MgueZwb1wi
丹生都比売神社
— 達人 (@catatsuy) August 29, 2022
紀伊国一宮。天野大社とも。
高野山の入り口になるので、高野山参拝前にはまずこの神社に参拝する習わしだった。本殿が4つあり、それぞれの祭神が丹生都比売大神・高野御子大神・大食津比売大神・市杵島比売大神。仏教系の遺物も残る。外鳥居は神仏習合を示す両部鳥居。 pic.twitter.com/WfpOiamXvX
高野山も色々行ってきました😊 pic.twitter.com/5GS6ZD8GY4
— 達人 (@catatsuy) August 29, 2022
宇賀部神社
— 達人 (@catatsuy) August 30, 2022
読みは「うかべ」が正しいようだが、実際には「おこべさん」などと呼ばれる。日本書紀で神武東征中に殺された名草戸畔(なぐさとべ)の頭を葬ったと伝わる。宮司家の小野田家は名草戸畔の子孫と伝わる。戦後にフィリピンから帰還した小野田寛郎の実家。 pic.twitter.com/KodPkkqPvM
伊太祁󠄀曽神社(いたきそ)
— 達人 (@catatsuy) August 30, 2022
紀伊国一宮。祭神は五十猛命(日本書紀に出てくるスサノオの子で木の神、紀伊で祀られているという記述あり)など。元々は日前神宮・國懸神宮の場所にあったが今の場所に移転したらしい。豊臣秀吉の根来征伐で罹災し社殿と古記録を消失。 pic.twitter.com/MiHnrIJ6jW
竈山神社(かまやま)
— 達人 (@catatsuy) August 30, 2022
記紀に五瀬命が葬られた場所として竈山が出てくる。主催神は彦五瀬命。本殿の後ろにある古墳の竈山墓は五瀬命の墓として宮内庁に比定されている。竈山神社の他に日前神宮・國懸神宮と伊太祁󠄀曽神社に参詣することを和歌山三社参りと言う。 pic.twitter.com/DQwd6DrLeU
日前神宮・國懸神宮(ひのくま・くにかかす)
— 達人 (@catatsuy) August 30, 2022
紀伊国一宮。境内に2つの神社がある。日前宮とも。日本書紀に八咫鏡の前に鋳造した鏡を祀っているという記述がある。鏡は日像鏡・日矛鏡(ひがたのかがみ・ひぼこのかがみ)。 pic.twitter.com/9LNkDYF9eT
水門吹上神社(湊本えびす)
— 達人 (@catatsuy) August 30, 2022
水門神社は蛭兒神(戎様)、吹上神社は大己貴神(大国様)が祭神で別の神社だが合祀されている。
古事記で五瀬命が亡くなった場所とされる男水門はこの地であると伝えられている。
紀州の十日戎祭発祥の社としても知られている。のし飴も当社が発祥。 pic.twitter.com/p19uFQdMV0
玉津島神社
— 達人 (@catatsuy) August 30, 2022
玉津嶋神社とも。祭神は稚日女尊(天照大神の妹と境内の説明にあったが諸説あり)など。
平安時代以降に和歌の神である衣通姫(そとおりひめ)も合祀されたことで和歌で有名になる。
この辺り一帯が和歌浦と呼ばれる景勝地で聖武天皇が絶賛したと伝わる。 pic.twitter.com/hVyRkNJ16S
鹽竈神社(しおがま)
— 達人 (@catatsuy) August 30, 2022
元は玉津島神社の祓所。主祭神は鹽槌翁尊。
紀ノ川上流の丹生都比賣神社の神輿が、玉津島神社へ渡される「浜降りの神事」の際に神輿が置かれたため、輿の窟(こしのいわや)と呼ばれていた。奇石は加羅(きゃら)岩と呼ばれ、波が打ち寄せる様は和歌浦十景とされた。 pic.twitter.com/r1InHtzmVM
玉津島は元々は紀ノ川の河口に浮かぶ6つの小島の1つだったが、現在では妹背山を除きすべて陸地化している。妹背山には初代紀州藩主の徳川頼宣が母をしのんで建てた海禅院多宝塔があり、橋で渡れるようになっている。 pic.twitter.com/pbQy7CoA57
— 達人 (@catatsuy) August 30, 2022
藤白神社
— 達人 (@catatsuy) August 31, 2022
祭神は饒速日命。神職は藤白鈴木氏が代々務めた。鈴木氏がかつて居住していた鈴木屋敷も残る(解体工事中)。鈴木姓発祥の地とされる。熊野古道沿いにある神社のうち最も格式の高い五体王子の1つ。熊野三山の入口とも言われる。近くで有間皇子が処刑されており境内に有間皇子神社もある。 pic.twitter.com/NOjWOzBhJ0
橘本神社(きつもと)
— 達人 (@catatsuy) August 31, 2022
祭神は記紀に垂仁天皇の代に天皇の命で常世の国に渡り、橘を持ち帰ったと記述されている田道間守(たぢまもり)。帰ったときには垂仁天皇は崩御しており、嘆き悲しんで天皇陵で自殺したという。橘はみかんの原種でみかん発祥の地である。みかん・菓子業者から信仰を集める。 pic.twitter.com/s1BOFn7536
須佐神社(和歌山県有田市千田)
— 達人 (@catatsuy) August 31, 2022
出雲の須佐神社と同様に祭神は素戔嗚尊。千田神社とも。
713年に大和国から勧請されたのが始まりらしいが、どの神社なのか不明。千田祭が有名。海の守護神や災難除の神として信仰され、紀州徳川家からも厚く崇敬された。 pic.twitter.com/krzP1CYHVv
紀伊田辺・白浜・串本町
鬪雞神社
— 達人 (@catatsuy) August 31, 2022
熊野本宮大社を勧請したことが始まり。源平合戦の時、熊野別当湛増が鶏を紅白2色に分けて7度闘わせ、すべて白の鶏が勝ったので源氏に味方することを決め、熊野水軍を率いて屋島・壇ノ浦を戦ったという。武蔵坊弁慶は湛増の子(詳細不明)であり、必死に説得したとされる。 pic.twitter.com/IB1udXgg1F
本殿裏の神山の仮庵山(かりおやま)には自然林が残り、南方熊楠は伐採に対して厳しく抗議した。南方熊楠はクラガリ山と呼んだ。南方熊楠の妻は鬪雞神社の宮司の娘。
— 達人 (@catatsuy) August 31, 2022
熊野三所神社
— 達人 (@catatsuy) August 31, 2022
有名な海水浴場の白良浜のすぐ近くにある。境内の中も一部砂浜になっている。熊野三所権現を観請している。 pic.twitter.com/idX4P5iD5c
潮御崎神社(しおのみさき)
— 達人 (@catatsuy) August 31, 2022
本州最南端の神社。潮岬灯台の近くにある。主祭神は少彦名命。
少彦名命は熊野の御崎より常世国に行ったという記述が日本書紀にある。 pic.twitter.com/vuZq8EyGix
熊野
熊野那智大社
— 達人 (@catatsuy) September 1, 2022
熊野三山の一つ。熊野夫須美大神を主祭神とする。日本神話の神だとイザナミに比定される。八咫烏を祀る御縣彦社(みあがたひこしゃ)や宝物殿も境内にある。
山の上にあり石段も長めなので注意。ただ駐車場がすぐ近くにもある。 pic.twitter.com/ZvKupbvyts
青岸渡寺(せいがんとじ)
— 達人 (@catatsuy) September 1, 2022
熊野那智大社のすぐ隣にある天台宗の寺院。明治政府の神仏分離令により、熊野那智大社から寺を分けて復興された。他の熊野三山には寺は隣接していない。三重塔もある。 pic.twitter.com/gUt2EbOdS7
飛瀧神社(ひろう)
— 達人 (@catatsuy) September 1, 2022
祭神は大己貴神。熊野那智大社の別宮。那智滝自体がご神体なので本殿も拝殿もない。有料だが拝所舞台に入ることもでき、そこで延命長寿の水と伝えられている瀧つぼの水を飲める。 pic.twitter.com/bMhdmX5IsO
那智滝の動画です pic.twitter.com/U4D2iAszsV
— 達人 (@catatsuy) September 1, 2022
大門坂
— 達人 (@catatsuy) September 1, 2022
熊野古道の面影を最も色濃く残しているとして知られている。
夫婦杉と九十九王子最後の一社・多富気王子(たふけ)がある。 pic.twitter.com/djlfrJF3hN
補陀洛山寺(ふだらくさんじ)
— 達人 (@catatsuy) September 1, 2022
天台宗の寺院。隣接する浜の宮王子社跡には熊野三所大神社がある。元々は神仏習合で一体だったが明治時代に分離。補陀落渡海が何度も行われた。平維盛の供養塔などもある。 pic.twitter.com/aeAPUmmIPd
熊野三所大神社(くまのさんしょおおみわやしろ)
— 達人 (@catatsuy) September 1, 2022
浜の宮王子社跡にある神社。補陀洛山寺に隣接する。神仏習合の名残で本殿の前でも参拝が可能。祭神は熊野三社それぞれの神々。 pic.twitter.com/J2398KMag1
熊野本宮大社
— 達人 (@catatsuy) September 2, 2022
熊野三山の一つ。家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)を主祭神とする。日本神話の神だとスサノオ、本地仏は阿弥陀如来。元は現在の大斎原にあったが、明治22年の大水害で現在の場所に移転した。八咫烏に対して厚い信仰がある。
本殿前の写真がSNS投稿禁止のため写真少なめ。 pic.twitter.com/BTFIBSYLCF
産田社(うぶたしゃ)
— 達人 (@catatsuy) September 2, 2022
伊邪那美命の荒御魂が祀られている。女性の守り神で、あらゆる物事を生み出す力を授かることができるとされる。
熊野本宮大社の次に行くことが推奨されている。 pic.twitter.com/bQXY2iLncs
大斎原(おおゆのはら)
— 達人 (@catatsuy) September 2, 2022
熊野本宮が元々あった旧社地。鉄筋コンクリート造の日本一とされる大鳥居が建つ。こちらも写真撮影禁止のため写真少なめ。
産田社の次に行くことが推奨されている。 pic.twitter.com/ZthCEqfCLZ
ちなみに熊野の神の最初の降臨地と言われる真名井社にも行こうとしましたが、事故があったようで通行止めになっていて入れませんでした😢
— 達人 (@catatsuy) September 2, 2022
神倉神社
— 達人 (@catatsuy) September 3, 2022
熊野速玉大社の境外摂社。神が降臨する神体山とされる神倉山にある。日本書紀の神武東征の際に皇軍が登った天磐盾と言われている。
社殿裏にゴトビキ岩という巨石が存在。
祭神は高倉下命・天照大神。御燈祭という火祭りも有名。 pic.twitter.com/dRrOqxbQbp
熊野速玉大社
— 達人 (@catatsuy) September 3, 2022
熊野三山の一つ。主祭神は熊野速玉大神と熊野夫須美大神。日本神話の神のイザナギ・イザナミに比定される。神倉神社に降臨した熊野権現を勧請するために造営されたという。新宮とも呼ぶことがある(地名になっている)。 pic.twitter.com/HRbvb4k40T
阿須賀神社
— 達人 (@catatsuy) September 3, 2022
熊野川河口近くにある神社。蓬莱山の麓にある。
境内から弥生時代の遺跡も発掘されており、かなり歴史があると考えられる。祭神は事解男命など。
徐福が最初に上陸した地とも伝えられ、境内に徐福之宮がある。
境内に歴史民俗資料館がある。 pic.twitter.com/Y7XUQ45lZk
花窟神社(はなのいわや)
— 達人 (@catatsuy) September 3, 2022
日本書紀の一書にイザナミが紀伊国の熊野の有馬村に埋葬されたと書かれているが、その埋葬された場所とされている。巨岩自体が信仰対象であり社殿はない。
祭神は伊弉冉尊・軻遇突智尊。対面に軻遇突智尊の墓とされる岩もある。 pic.twitter.com/NUjIVVqhnT
産田神社(うぶた)
— 達人 (@catatsuy) September 3, 2022
花窟神社と違い、伊弉冉尊が軻遇突智尊を生んで亡くなった場所とされる。祭神は伊弉冉尊・軻遇突智尊。
古代の神社には社殿がなく、ひもろぎと呼ばれる神をもてなす場所を示す丸石が置かれていたらしいが、その跡が残る非常に珍しい神社。かなり歴史が古い神社と考えられる。 pic.twitter.com/khhOsOsW9m
尾鷲神社
— 達人 (@catatsuy) September 3, 2022
主祭神は武速須佐之男命。熊野古道沿いで栄えた地域の神社。夫婦楠と呼ばれる大楠がある。 pic.twitter.com/x854XzK8Uo
最後に
熊野は以前に行ったことがありましたが、そのときは公共交通機関のみで観光したので縛りが多い状況でした。今回はレンタカーを借りた上で和歌山全体を回ることができました。
日前神宮・國懸神宮は個人的に行きたかった神宮の中で唯一行けてなかった神宮でしたし、高野山もずっと行ってみたかったのですが、行けてなかった場所でした。
今回の旅行で日前神宮・國懸神宮に行けたので、これで行きたかった神宮(伊勢神宮・伊弉諾神宮・霧島神宮・鹿児島神宮・鵜戸神宮・宮崎神宮・気比神宮・宇佐神宮・石上神宮・鹿島神宮・香取神宮)は全部行けたことになる😂
— 達人 (@catatsuy) August 30, 2022
日本神話に関係する神社で言うと花窟神社は絶対に行きたい神社の一つだったので今回行けて良かったです。難易度としては車があれば熊野三山のついででいけますが、公共交通機関だとなかなか厳しいと思います。
熊野三山は以前行ったことがあったので、死ぬまでに絶対に行きたいと思っていた神社にいけてよかったです😊(分かる人には分かる写真) pic.twitter.com/JyCZ3CcD8w
— 達人 (@catatsuy) September 3, 2022
また熊野は何度行ってもいい神社だなと感じます。歴史的にも努力をしないと行けない場所とされてきて、現在でもある程度努力をしないと観光がなかなかできない場所です。しかし行く価値は間違いなくありますし、今だと整備が進んでいるので少し頑張れば普通に行けます。
この辺りは古事記・日本書紀に名指しで出てくる地域です。古代史好きなら絶対に押さえたい地域です。どこかで時間を取って回ることがおすすめです。
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