ユーモアについての訓練:書けなさと享楽的こだわり

最近、noteを書けなくなっていました。

書くことがないわけではありません。頭の中で書きたい、整理したいと思うことはぼんやりとあります。ただ、なんとなく書けないのです。

今年の夏頃から、書けない理由について整理し、noteにまとめてきました。書きたい。でも書けない、書くにくい、書くのが怖い。じゃあどうするか。

これがわたしの課題でした。

先日図書館で「メイキング・オブ・勉強の哲学」(著:千葉 雅也)を借り、読んでいます。

この本は、千葉さんの著作であり2017年4月に初版が発行された「勉強の哲学ー来るべきバカのためにー」を、著者である千葉さん自身が「制作論」という観点から振り返られたものです。メイキングオブでない方は、2018年に購入して読んだ記憶があります。また、制作論についての補章が追加された文庫版も、今年読みました。

話をメイキングオブの内容に戻します。この本の中に「アイロニーの沼地」という言葉がありました(p37)。わたしが書きたいのに書けなくなるときはまさにこのような感じです。わたし自身のもつ思考の偏りや癖、それを「いけないことだ」と考え、そして考えすぎてしまう。書きたいことがあるとき、少しでも誤謬がありそうなら、あるいは漠然と自信がないなら、書くことができない。書いても誰にも見せない。

余裕がない時ほど、そこに「程度」の入る余地はありませんでした。本当にこんなことを書いていいのか、何か間違ってはいないか、誰かを傷つけるんじゃないか。これも、傷つけすぎてしまうといった程度の話は頭になく、誰かをほんの少しでも(!)傷つける可能性を排除できないなら、迷惑をかけそうなら、書かない方がマシなのではないか、という極端なものでした。こう極端に考えるときは大概息苦しく、思考が発散して、頭がぐるぐるする。行動できなくなる。行動しながら、つねに片手で別のことを考えている。という具合でした。

わたしの傾向なのですが、アイロニカルになりすぎるきらいがあり、どうしても仮固定の許容量が少ないのです。話をするときに仮固定が多くなると、それを放って先に進めないという感じです。どこかで齟齬が生じるんじゃないか、話の筋は通っているかと、話しながら同時並行で考え始めてしまいます。そうすると思考は硬直して、どうにも進めなくなる。

千葉さんはこの本の中で、自分の作業を他人に切断してもらうことについてお話されています(p102:最初は決断主義だった)。ある程度決断主義的に振る舞うとして、その頼り先を複数持つこと。複数の他者に切断してもらうー例えば原稿の締め切りや、編集の方、また他の誰かとの語りの中である程度偶然に有限化が行われるーことで、わたしたちは無限の作業を切断できる。すごく面白いです。

自分の享楽的こだわりは何か。中立を目指すような書き方をする中で、それでも偏るのであれば、何によってか。

ひとつ言えるのは、わたしは「共存」にどうしても目がいくということです。これは大学でしていた研究によるところが大きいと思います。生物科出身のわたしは、ざっぱに言うと、生物における競争と共存の構造を、種よりもさらに下位の構造である個体のレベルで(個体▶種▶属科目綱門界です)観測することを目的として研究していました。

競争とはなにか、共存とはなにか。そして共存についての基本を押さえた上で、どれくらいズラすことができるか。ここに関心がいくのは、やっぱり大学での経験によるところが大きいと思います。

また、複数について知りたい、触れたいと思うこと、例えば学問について広く知りたいと思うのも、わたしの享楽であるような気がしています。学部生のころは、今から思うと本当に本を読まなかった。それが、研究室に配属され、競争と共存の話に触れてから、変わりました。そしてこの時期は、「勉強の哲学」を初めて読んだ時期でもあります。そこからわたしは、生物学の本だけでなく、社会学、人類学、経済学、哲学といった本も読むようになりました。あるいは小説や、文学の本(小説の批評や物語の構造についてなど)にも触れるようになりました。これは大きな変化だと、今書きながら思っています。これらを読む前に何を考えていたのか、ほとんど思い出せないです。もちろん1つ1つの学問について深く系統だって学んだわけではないのですが、広く浅く色々なことを読むようになったのは、かなりの部分が「勉強の哲学」の影響だと思います。

今回は勢いに任せて書きました。いつもなら、本の感想はもう少し慎重に、おっかなびっくりしながら、時間をかけて考え書くのですが、今回は「メイキング・オブ・勉強の哲学」の実践だと思って、ある程度勢いに任せて書きました。

「メイキング・オブ・勉強の哲学」、面白かったので手元に一つ置くことにしました。もう少し時間をかけて、読もうと思います。

(ねこやなぎ)

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