【連作短歌】父の日
戸籍の筆頭者はずっとあなたで、役所の書類でだけ名前を書く
「父」という言葉は知っているけれど呼格で使う機会はなかった
「我々はどこから来たのか」それよりも身近な人のことを知りたい
「お父さんはどんな仕事をしているの?」なんとも無邪気で羨ましいよ
「あの子の親、離婚したって聞いたけど」そう勘違いされるのも嫌
エピソードのかけらで描く遺伝子の五割をくれた人の輪郭
今は亡き人の形見の置き時計生き急ぐ針を幾度も直す
ブラウスにソースをこぼすことはもう無くても誰かに拭いてほしいよ
覚えてないけど親子なんだね 墓前のいちじく私もあなたも大好物
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?