梅木袱紗/黒猫幻想堂

怪奇幻想文学愛好者。こちらでは短歌や、著作権切れの海外小説の翻訳などを掲載していくつも…

梅木袱紗/黒猫幻想堂

怪奇幻想文学愛好者。こちらでは短歌や、著作権切れの海外小説の翻訳などを掲載していくつもりです。ブログ(https://catandfantasia.fc2.net/)は書評や雑記の置き場。

マガジン

  • 短歌まとめ

    これまで作った短歌をまとめていきます。基本は月一本のまとめ記事。時には連作も。

  • 翻訳

    これまで訳してきた、英語圏の著作権切れ作品をまとめました。

最近の記事

  • 固定された記事

エレノア・モードーント作「ある天才」 第1回(翻訳)

【訳者より】  波乱の生涯を送った英国生まれの女性小説家、エレノア・モードーント(Elinor Mordaunt, 1872–1942)の短篇 “Genius” の翻訳を、3回に分けてお送りします。原作は1921〜22年に雑誌に掲載され、1922年の英国短篇小説ベスト集 The Best British Short Stories of 1922 にも採録された作品です。 また、作者モードーントの略年表も併せて公開しますので、ご覧ください。 https://note.com

    • 短歌 2024年8月

      その時に感じた気持ちがP波です。後からできた短歌がS波 涼やかな部屋で戦争映画観る私を時計の針が指さす 今すぐに消え入りたいほど辛い夜に毛布の下で泣く肝門脈 予想外の恋なんてもうないのかなバラだけ先に枯れた花束 無駄な毛と無為な時間を対消滅させるお店の白い天井 絞っても絞っても抜けない眠気スポンジボブの夏が去り行く

      • 【資料】エレノア・モードーント略年表

        エレノア・モードーント(Elinor Mordaunt)は、筆者が調査した限り日本国内ではほとんどその存在を知られていない小説家です。発見できた唯一の邦訳作品は、旅行記 A Ship of Solace からの抜粋である、翔田朱美訳「船旅は猫とともに」(レスリー・オマーラ編『気ままな猫の14物語』、二見書房、1991年に収録)のみでした。 今回の拙訳「ある天才」をお読みいただき、モードーントに興味を持たれた方の便宜のために、この作家の略年表を併せて公開します。 この略年表

        • 短歌 2024年7月

          キッチンは今日も蒸しててぶつかったお酢とお酒の音だけ風鈴 この日々がコピペではない証拠として毎朝一個減るヨーグルト 東照宮に逆さの柱があるように今日も一つの家事をやり残す 恨めしげなしらす干しと目が合って細い背骨が前歯に当たる 得票数の下一桁にいる私を感じるために選挙に行こう 私たちはアダムの子孫今日も明日も列なすファイルに名前を授ける この人生が「制作・著作 NHK」なら出演できないあいつやそいつ リーマンの腰の高さの不連続な線が大気を引き裂いて五時

        • 固定された記事

        エレノア・モードーント作「ある天才」 第1回(翻訳)

        マガジン

        • 短歌まとめ
          25本
        • 翻訳
          4本

        記事

          短歌 2024年6月

          404 not found お探しの未来は抹消されたようです 喪服セット肩にかついだ帰り道まばたきごとに見える血の色 お互いに九十歳まで元気ならやり直そうよ老人ホームで 自販機の売り切れランプが指し示すこの街にいる同好の士ら あの人の使い残しを喰い漁るわたしダイオウグソクムシです 時針分針秒針。時報の音に耳をすますこの瞬間に私は生きる #自由の歌 繁栄を祈る刺繍のドレスさえ奪われ踏まれる国のあること Web題詠

          詩 その箱

          「思い出す価値もなし」の箱がある 沢山ものが入っている 無価値なものがはみ出ている その箱に入れるには惜しいものがある この箱、なんでシュレッダーが付いていないんだろう 昔書いた、詩のようなものを発掘しました。 私の頭の中はいつもゴミだらけだとよく思います。いつかすっきりするとよいのですが。

          短歌 2024年5月

          「推し」のこと「押し」と書いちゃうお母さんに押し付けにいく赤い花束 ばあちゃんの茶碗にぽとりと前歯落つ残り時間を告げるチャイムだ あいつから届いた手紙を燃やすならついでにマシュマロ焼けばよかった 「安全」という字に住まう女王は冠の下で油断を見張る 虐殺も猫も等しく流れ去るSNSは命の格差 単語で短歌・フリー素材で短歌・連想短歌 単語で短歌 5月8日「新宿」 ご馳走がいくらでもある新宿でそれでも集めるケーキの材料 連想短歌 5月15日「ダークヒーロー」 死にそうな

          短歌 2024年4月

          「もっともっと、注目されたい」? さてはあなた、インプレゾンビに噛まれましたね? 言語野が熱暴走する朝三時わたしを責める過去の残像 シーグラスが無害な丸みを帯びるまでに傷つけてきた魚らのこと 週五回鉄路の上を往復し溶けていく我バターのごとく 保湿すべきパーツが年々増えていく爪もかかとも心の襞も 花筏浮かべたシャツの水面を銀の舳先でアイロンはゆく 単語で短歌・フリー素材で短歌 単語で短歌 4月5日「穴」 秘められたその口元が知りたくて穴が開くほどマスクを見つめる

          短歌 2024年3月

          春まだき水道水の冷たさがわたしの指に桜を咲かす 川面から電車を街を橋を見て知らない人と手を振りあった クッションを抱いて休憩する君に「小椅子の聖母」がダブって見える 置き配は現代の魔法ひょっとしてそこの陰には笠地蔵さま 幸せな気分にも後ろ髪はない逃げないように抱きしめるんだ 何年もともに過ごした同僚らお菓子に化けてデスクに集う この種族に今日もまた擬態する「族」と「旅」とを書き間違えつつ 『シャイニング』 お揃いのスプーン洗いかごに立つ廊下の先の双子のように

          【連作短歌】県立高校

          地元一の進学校で読まされる「鶏口牛後」は釈迦に説法 何者か分からずめまい覚えつつどんな顔して廊下を歩こう? メネラウス狐の顔をなぞりつつ文字盤で泳ぐイルカを見ていた “Juvenile delinquency” 今日覚えた熟語がわたしを挑発している 「比較する際は条件を揃えよ」と言うなら偏差値とか無意味じゃん 偏差値で裁かれながら顔面で格付けされる多層の地獄 図書室は一番空気が重い場所 みんな勉強してる、勉強してる、勉強してる 悪口に汚れた耳に押し当てた階段下の

          【連作短歌】県立高校

          短歌 2024年2月

          僕たちもまっしろなまま降ってきて汚されるために生きているんだ 君みたいに腕を組むひと東京でよく見かけるよ忘れたいのに もし何か間違えたこと言ったならWindowsみたく警告してよ たい焼きと同じでナンにも向きがある「頭と尻尾、どっちから食う?」 覚えてる? 隣の席にメガネ君デスクトップにイルカがいた頃 「2月15日」 チョコレート今日は主役の座を降りて店の景色に溶け込んでいく 「2月29日」 四年ぶんの嘆きを詰めて埋め直す今日だけ開くこの玉手箱

          これまでの活動記録

          翻訳フランシス・マリオン・クロフォード作「楽園の水辺で」 ("By the Waters of Paradise" by Francis Marion Crawford) 第1章: 『社会人文芸同人誌ファウスト』 創刊号(2022/2) (Kindle) エドガー・アラン・ポー作「ライジーア」 (“Ligeia” by Edger Allan Poe) 前編: note(2023/2) 後編: note(2023/2) エレノア・モードーント作「ある天才」 (

          これまでの活動記録

          短歌 2024年1月

          数の子をかじるこの口「別にまぁ子供はいいや」と言ったこの口 シンデレラ連休はもう終わりだよ夜七時からはご飯の支度 ペンギンの頭を毎日殴ってる涙じゃなくてエタノールが出る ぐるぐると回る思考の足跡が踏みならしてくグレーの迷路 ていねいな暮らし早起きした日には彼の遺骨でお茶を点てます 形容詞の結晶白く降り積もり私を隠すあなたの目から 東京に向かう男と去る女デュエットしてる「ドア閉まります」

          短歌 2023年12月

          ふわふわと仮設廊下を渡りつつ私は「外国人」になりゆく 旅人に大雨降らすこの空は「泣き顔も見て」と言ってるようで 重くってぬくい湯たんぽ胸に抱きオーストラリアの野原を跳ねたい 自動車の流れる川の両岸でみな「通りゃんせ」の開演を待つ 日めくりも残り少なくなりにけりシュトーレンもあと三センチだけ 今日はどこもチキンばっかり売っているポークとビーフの身代わりとして

          短歌 2023年11月

          この前まであんなに一緒だったのに軽薄なキミまた夏に会おう 3枚のパネルを揃えて消すときに冷静なままの自分が怖い 太陽の光を浴びて生きた日々閾値を超えて君達を殺す 蹴飛ばした毛布を自分で直すときわたしはわたしの母親である 君の手は詩文の上をてくてくと歩いていくよ弱強格で 抜け落ちた羽根は勝手に舞っていく鳥自身とは別の空へと

          短歌 2023年10月

          フィクションの過剰摂取で人は死ぬけれど私には生命線で ありがとう私の代わりに擦り切れてくれて君は修理が利くのでよかった もし尻尾生えていたなら振ってみたい いつもより上手くご飯が炊けた日 (EGOIST活動終了に寄せて) そこにいるでもそこにいない薄紅の金魚は去った空気を揺らし #短歌作ろう #毎日お題 (風) 暴風に包み込まれた最上階角部屋の宵ここは竜の背 (ケンカ) 違うんだあの子と私は「しない」んじゃなくて「できない」今となっては (写真) もう要らない証