梅木袱紗/黒猫幻想堂

怪奇幻想文学愛好者。こちらでは短歌や、著作権切れの海外小説の翻訳などを掲載していくつも…

梅木袱紗/黒猫幻想堂

怪奇幻想文学愛好者。こちらでは短歌や、著作権切れの海外小説の翻訳などを掲載していくつもりです。ブログ(https://catandfantasia.fc2.net/)は書評や雑記の置き場。

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  • 短歌まとめ

    これまで作った短歌をまとめていきます。基本は月一本のまとめ記事。時には連作も。

最近の記事

  • 固定された記事

エドガー・アラン・ポー作「ライジーア」後編 (翻訳習作)

ポーの代表的短編の一つ「ライジーア」の翻訳の後編です。 前編はこちら。 既に先人たちの素晴らしい翻訳が存在する作品なので、こうして習作を公開することにはためらいもあるのですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。 イメージ画は、自動画像生成AI「お絵かきばりぐっどくん」(StableDiffusion)に描いてもらったものをトリミングして使用しています。  こうして妻は死んだ。悲嘆に暮れてそのなきがらの上に崩れ落ちた私にとって、ライン河畔の薄暗く頽廃した街で営む孤独な暮らしは

    • 短歌 2024年4月

      「もっともっと、注目されたい」? さてはあなた、インプレゾンビに噛まれましたね? 言語野が熱暴走する朝三時わたしを責める過去の残像 シーグラスが無害な丸みを帯びるまでに傷つけてきた魚らのこと 週五回鉄路の上を往復し溶けていく我バターのごとく 保湿すべきパーツが年々増えていく爪もかかとも心の襞も 花筏浮かべたシャツの水面を銀の舳先でアイロンはゆく 単語で短歌・フリー素材で短歌 単語で短歌 4月5日「穴」 秘められたその口元が知りたくて穴が開くほどマスクを見つめる

      • 短歌 2024年3月

        春まだき水道水の冷たさがわたしの指に桜を咲かす 川面から電車を街を橋を見て知らない人と手を振りあった クッションを抱いて休憩する君に「小椅子の聖母」がダブって見える 置き配は現代の魔法ひょっとしてそこの陰には笠地蔵さま 幸せな気分にも後ろ髪はない逃げないように抱きしめるんだ 何年もともに過ごした同僚らお菓子に化けてデスクに集う この種族に今日もまた擬態する「族」と「旅」とを書き間違えつつ 『シャイニング』 お揃いのスプーン洗いかごに立つ廊下の先の双子のように

        • 【連作短歌】県立高校

          地元一の進学校で読まされる「鶏口牛後」は釈迦に説法 何者か分からずめまい覚えつつどんな顔して廊下を歩こう? メネラウス狐の顔をなぞりつつ文字盤で泳ぐイルカを見ていた “Juvenile delinquency” 今日覚えた熟語がわたしを挑発している 「比較する際は条件を揃えよ」と言うなら偏差値とか無意味じゃん 偏差値で裁かれながら顔面で格付けされる多層の地獄 図書室は一番空気が重い場所 みんな勉強してる、勉強してる、勉強してる 悪口に汚れた耳に押し当てた階段下の

        • 固定された記事

        エドガー・アラン・ポー作「ライジーア」後編 (翻訳習作)

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        • 短歌まとめ
          21本

        記事

          短歌 2024年2月

          僕たちもまっしろなまま降ってきて汚されるために生きているんだ 君みたいに腕を組むひと東京でよく見かけるよ忘れたいのに もし何か間違えたこと言ったならWindowsみたく警告してよ たい焼きと同じでナンにも向きがある「頭と尻尾、どっちから食う?」 覚えてる? 隣の席にメガネ君デスクトップにイルカがいた頃 「2月15日」 チョコレート今日は主役の座を降りて店の景色に溶け込んでいく 「2月29日」 四年ぶんの嘆きを詰めて埋め直す今日だけ開くこの玉手箱

          これまでの活動記録

          翻訳フランシス・マリオン・クロフォード作「楽園の水辺で」 (原題:Francis Marion Crawford "By the Waters of Paradise") 第1章: 『社会人文芸同人誌ファウスト』 創刊号(2022/2) (Kindle) エドガー・アラン・ポー作「ライジーア」 (原題:Edger Allan Poe “Ligeia”) 前編: note(2023/2) 後編: note(2023/2) 短歌NHK短歌テキスト 2024年3月号

          これまでの活動記録

          短歌 2024年1月

          数の子をかじるこの口「別にまぁ子供はいいや」と言ったこの口 シンデレラ連休はもう終わりだよ夜七時からはご飯の支度 ペンギンの頭を毎日殴ってる涙じゃなくてエタノールが出る ぐるぐると回る思考の足跡が踏みならしてくグレーの迷路 ていねいな暮らし早起きした日には彼の遺骨でお茶を点てます 形容詞の結晶白く降り積もり私を隠すあなたの目から 東京に向かう男と去る女デュエットしてる「ドア閉まります」

          短歌 2023年12月

          ふわふわと仮設廊下を渡りつつ私は「外国人」になりゆく 旅人に大雨降らすこの空は「泣き顔も見て」と言ってるようで 重くってぬくい湯たんぽ胸に抱きオーストラリアの野原を跳ねたい 自動車の流れる川の両岸でみな「通りゃんせ」の開演を待つ 日めくりも残り少なくなりにけりシュトーレンもあと三センチだけ 今日はどこもチキンばっかり売っているポークとビーフの身代わりとして

          短歌 2023年11月

          この前まであんなに一緒だったのに軽薄なキミまた夏に会おう 3枚のパネルを揃えて消すときに冷静なままの自分が怖い 太陽の光を浴びて生きた日々閾値を超えて君達を殺す 蹴飛ばした毛布を自分で直すときわたしはわたしの母親である 君の手は詩文の上をてくてくと歩いていくよ弱強格で 抜け落ちた羽根は勝手に舞っていく鳥自身とは別の空へと

          短歌 2023年10月

          フィクションの過剰摂取で人は死ぬけれど私には生命線で ありがとう私の代わりに擦り切れてくれて君は修理が利くのでよかった もし尻尾生えていたなら振ってみたい いつもより上手くご飯が炊けた日 (EGOIST活動終了に寄せて) そこにいるでもそこにいない薄紅の金魚は去った空気を揺らし #短歌作ろう #毎日お題 (風) 暴風に包み込まれた最上階角部屋の宵ここは竜の背 (ケンカ) 違うんだあの子と私は「しない」んじゃなくて「できない」今となっては (写真) もう要らない証

          短歌 2023年9月

          二割引きスイカの赤が夕焼けを引き止めている九月の十日 真夜中に目を覚ましてもスマホの画面見るまで時刻は確定しない (実家にて) 高校のクラスTシャツ着て寝るが背中の奴らは夢でも会わない 丸三日寝ぼけた頭を出迎える悪魔の数の迷惑メール サラリーマン電車の座席で四股を踏み上司を投げに出勤するのか ダイヤモンド空から降って傘のうえバチを叩いて水鏡になる あの夏に出会い別れた黒猫の幻と行く落ち葉の道を

          短歌 2023年8月

          僕たちがコップの麦茶を飲む横で水吸い上げる花瓶のひまわり 大雨に閉じ込められた食人鬼骨髄みたいなTOPPOをかじる 0と1の仮面を被った役者たち今日も電子の舞台を歩む 全国の「行きたくない」を集めたら東京ドーム何個分 夏色は白でもブルーでもなくて冷蔵庫にある麦茶の色だ (検査) 数滴の唾液が薬と混ざり合い落下していく地獄の穴へ 人類は皆兄弟であるそうで コロナ兄弟と闘っている 液晶に現れた人に感染(うつ)さぬよう咳エチケット励行している (来てほしくない次のた

          短歌 2023年7月

          化粧水の瓶の封切り日付書くそういえば今日はあの人の オペラ座の桟敷みたいな教室ではぐれた消しゴム忘れられずに 「さえぎらない」会話のルールを踏みにじり入力していく追跡番号 (喫茶店にて) かたわらの少女には知れぬようにして少年はペイの残高を見る (#さよならTwitterの短歌) 青い鳥のちいさな翼で旅をした過去へ未来へ異世界までも 七年後君たちの子に会うまでに私も殻を破っておこう

          短歌 2023年6月

          キャンバスの上に描かれた船の帆は二重写しのキャンバスである 額縁の中の裸婦たち見つめおり(どうしてあなたは触れてくれない) この両目は何百通りかの一つ当てはめられてツーウィーク 薄れゆく黄金の記憶探しつつ遡上していくLINEの川を 沖縄戦の映画の翌朝に乗ったしみ一つない満員電車 この雲を心に貯蔵できたらいい雨降る夜も膨らめ綿菓子 どの旅も最後にはこのドアに着く全ての道は一筆書きだ

          【連作短歌】父の日

          戸籍の筆頭者はずっとあなたで、役所の書類でだけ名前を書く 「父」という言葉は知っているけれど呼格で使う機会はなかった 「我々はどこから来たのか」それよりも身近な人のことを知りたい 「お父さんはどんな仕事をしているの?」なんとも無邪気で羨ましいよ 「あの子の親、離婚したって聞いたけど」そう勘違いされるのも嫌 エピソードのかけらで描く遺伝子の五割をくれた人の輪郭 今は亡き人の形見の置き時計生き急ぐ針を幾度も直す ブラウスにソースをこぼすことはもう無くても誰かに拭いて

          【連作短歌】父の日

          短歌 2023年5月

          黄金の休暇が終わる リマインダにまた現れた「可燃ゴミ」の字 錠前の音を聞きつつこのドアの後ろに籠めた土日の空気 今日はごま和え明日は醤油とマヨネーズ サヤエンドウの着回しコーデ この世には長居不要と思いつつ脱毛サロンの予約完了 コーヒーと溶けた氷の汽水域は馬頭星雲になんか似ている 「新宿です」が「天竺です」に聞こえたので隣のおじさんたぶん沙悟浄 君たちも全員それぞれ親がいて根があるのだと思いつつ抜く