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大人へ絵本memo ~溜息のつきかた~

誰かが言いました。

「もうすぐ死ぬというのに
死ぬということが誰かの役にたたないものかと最近思います」


命を頂いて 生きてきた限り

自分の命も 誰かの役に立ってくれたら良いと

正直な 

目上の方の発言に

頷きました。


浮かぶのはこの絵本です。


宮澤賢治さんはどこまでも

どこまでもそのことと

向き合っていられたのだと思います。


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『竜のはなし』
宮沢 賢治 (著) 戸田 幸四郎 (画) 
1983年 戸田デザイン研究室

竜は強く

あらゆる生き物をたおしていました。

あるときに

「これからはもう悪いことをしない」と

良い心を起こします。

そのすぐ後に眠りにつくと 人間が見つけ

蛇だと思って竜の皮を剥ぎ出します。

竜は 今しがた誓った

自分への解釈を 裏切らないように

剥がれていく痛みに 耐えます。

肌のなくなった自分の身は 天日に当たり焼けるよう

水を求めて彷徨いたくも

今度はそこに 容赦なく現れる無数の虫たち


頂いてきた

命たちが教えてくれることを

しかと学んだから

竜はその最後を受け入れる。

美しい命の終わり方。


戸田幸四郎さんは「子どもに見せて下さい」と仰るでしょう。
けれど私は正直な絵に恐怖さえ感じて、
娘には案内できず、ひっそりと立てかけておりました。

その真剣さこそ、子どもにストレートに伝わると
わかってはいるのですが。

娘は表紙に吸い寄せられて

黙ってページをめくり

鑑賞しました。

その時間を、しっかりと受け止められる大人だけが
子どもに手渡せる絵本かもしれないと思います。


※宮沢賢治作品集の中の「手紙一」を「竜のはなし」として
絵本化したものです。

「銀河鉄道の夜」の サソリの話に通ずる物語です。


ページをめくってどうぞ

溜息をついて下さい。


人間ではなくて

生き物としての心を知りたくなったときに

絵本はいつも教えてくれます。



戸田幸四郎さんは走れメロスも描いています⬇



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