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最近おうちで読んだ、たのしい海外小説たち

暦の上では、虫が動き出す「啓蟄」は3月はじめごろ。
今年は感染症の影響であまり春の恩恵は受けられなかったけれど、本の虫こと私は順調に家で活動していました。

春にして君を離れ アガサ・クリスティ

5月に読んだ22冊の中で、一番刺さった。

 アガサ・クリスティといえば推理小説の女王、そんな風に思っていたけれど見事に覆された。「春にして君を離れ」は、誰も死なないし事件も起きない。

それでも読み手の心にじわじわと浸食していき、人によっては大きな恐怖のある読後感になると思う。

現実における様々な選択、見て見ぬ振り、無意識に優越感を守ろうとする認知バイアス。幸福な主婦であるはずのジョーンは自ら成型してきた虚像のイメージで生きている。それが虚であると気がついたとき、氷を投げ込まれたように心の芯が冷えるだろう。同時に迫られるのは、現実としっかり向き合うのか、それとも自分だけの虚構の中で生き続けるのか、の選択。

どこにでもありそうだからこそ、空恐ろしく哀しい哀しい話だった。
小説が好き、という人にはぜひ読んでみてほしい、どう感じたか人それぞれであることは間違いない。


緋文字 ホーソーン

読もうと思って読めていなかった古典。


アメリカの建国者たち(イギリスからの入植者)がいかに排他的で厳しい宗教規律に依り生活していたことがわかる。
現代人の感想としては「美談でもなんでもないな」。

「不義の恋」や「赤いAの文字」からイメージされるロマンスや人間関係を楽しむ作品ではなく、アメリカの深層に巣食う過度な信仰心(ex 魔女狩り)の源泉を暴くことが主なテーマとなる作品だった。


酒楼にて 魯迅


中国文学が読みたくて手に取った本。しかし彼は日本滞在歴が長いこともあって実のところ本書ではあまり文化の違いを感じ取れなかった。

日々の営みに対する丁寧な描写は、むしろどこに住んでいようと生活が普遍的であることを教えてくれたような気がした。中国文学史に明るくないため、いまいち彼のすごさを掴みきれずにいる。作品たちはとても好き。

青い城 モンゴメリ

100点満点です

よい〜〜〜〜〜!!『赤毛のアン』シリーズを書いたモンゴメリの作品というだけで期待できるのだけど、この本の主人公はアンのような少女ではなく、未婚で肩身の狭い卑屈な29歳。推せる。

物語の途中からヤケのように自分の殻を脱ぎ捨てて、生きたいように生きる姿はまじ最高。(緋文字の主人公、ヘスターとは真逆)

有名な赤毛のアンも「社会が求める従順な女の子」を飛び越えて成長するけれど、この本はもっとわかりやすく、社会常識に真っ向から歯向かって自分で自由を手に入れるのがテーマ。時代背景的に少し古い価値観も残っているけれど、それを上回るくらい新鮮で快活。憂鬱なことが多い世の中だけど、スカッとした読後感があった。

あ、あとシスターフッドの話でもある。みんなで助け合って、主体的に生きて行こうね!!

ドリアン・グレイの肖像

this is オスカーワイルド卿。


アンサイクロペディアに愛される男、オスカーワイルドによる唯一の短編作品。ワイルド自身がなぜこんなに人を惹きつけるのか知りたい方は、まず原田マハの「サロメ」を読むことをお勧めしたい。(ワイルドが書いたサロメじゃないよ!)

世紀末のロンドンに住む上流階級の戯れ、美男子による美男子の転落劇、不変の若さに懸ける並々ならぬ情熱…。ワイルドが生きていた、もしくはそう生きたいと思っていた世界観にどっぷり浸かれる。アンチエイジングの即身仏が見られるよ。


海外国内ジャンル問わず、ごりごり読んでいます。あとはフォートナイトをして、ツイステして、虹プロ見て、ジャニーズ見て生きてます。

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