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竹田城 ~闇の登山~

今回は兵庫県の竹田城のことを。

竹田城、これだけだと一般的な知識の人は「?」だろう。
しかし天空の城、それだったら全員が「あぁ、あれね。場所は分かんないけど」となる。

数年前に雲海に浮かぶ城跡が「天空の城のようだ!」と話題となった、天空の城ブームの先達者。

駅に飾られてる竹田城。発砲スチロールと綿で作ってある。

数年前の秋、秋の乗り放題パスを使って訪れた。

18切符は春夏冬だけで秋には存在しない。しかし『秋が不遇すぎる』とのことで、予め指定している連続した三日のみJR乗り放題という、18切符の下位互換…弟分の切符がある。

さて備中松山城と同じく山の上から見るのだが、雲海なので見れる時間は早朝、もちろん始発で向かっては間に合わない。

じゃあどうする?

備中松山城と同じパターンだ。終電出発だ。

『あの時もなんだかんだでコンビニがあったし、月明かりもあった。条件は同じだ』
と熟練者のような考えで、最寄りの竹田駅へ。

やはりの真っ暗闇

光は自販機の明かりのみ。
駅で過ごす手もあったが、ただただ闇を見ながら数時間は精神に異常を来しそうなので外へ。自販機の明かりによく分かんない虫も寄ってくるし。

駅前には街灯がチラホラとあるのだが、

住宅地ど真ん中である。
深夜にここをウロウロしてては紛うことなき不審者だ。

いやしかし、ここを離れたら暗闇の中になる。街灯のあるここが心休まる安全地帯なのだ。

深夜だし騒ぐ訳でも無いので見つかる可能性はほぼ無い。そして『旅の恥はかき捨て』とも言うではないか、経験として不審者の汚名を被って通報されてみるというのもアリかもしれない。

……

………

しかし羽目を外しても常識の枷は外すなという言葉もある、歌舞伎町の酔っ払いから聞いたことがある。
元々羽目すらも外してないけど、とりあえず不審者扱いを避ける為に住宅地ゾーンを離れる。

闇の中を進んでしばらくするとやはりあった。

コンビニ、闇の中で見つけた唯一の拠点。

砂漠で言うオアシスである。

周囲の灯りはこの信号機だけ。

しかも厄介な事に、備中松山と違いここではタクシーを呼べない。場所が遠いから営業時間に電話をかけても結構な時間を必要とするのだ。

ならば手は一つだけ。夜明けまでに見える場所、立雲峡へ登るしかない。

闇の登山。富士山の御来光を拝む人ならやるだろうが、あれはヘッドライトの行列と共に行く団体戦だ。

対してこっちはコンビニで買った懐中電灯たった一つだけの個人戦。

初期のバイオハザードのような怖さがある。
グロさでは最新作のが上だと思うが、怖さと言う点では初期の方が上だと思う。グラフィックも荒々しいし。

禍々しい暗闇の山に一人、そして『冷静に考えると何やってんだろ』感、それに何度も挫けそうになる。

こういう時は「あーー!!!」と大声を出せば気が楽になるのだが、ここは闇の山の中。
獣が起きてきたら困るし、そしたら正当防衛で狩られてしまうかもしれない。

こういう時は無心になる事だ。

無心になれば怖さも感じなくなる、無心になって大地を踏みしめて歩めばいい、無心になればすぐに着く…

そんな事を考えながら歩いた。まぁアレだ、無心にはなろうと思ってなれるものでは無い。

第三展望台、第二展望台…そして第一展望ポイントへ到着。

街を見下ろしてから思う。『こんなに光は無かったぞ』と。

ともかく、後は朝を待つだけである。

他にも雲海目当ての剛の者が数人。やはり他の人がいるだけでも心強い。

綺麗な月も出てたので、

朝を待つ間は月と雲との共演を楽しむ余裕も。この時に改めて思い知らされた。月光って淡いけど眩しいんだなと。

アークザラッドⅡのラスボス、もしくはヤムチャの繰気弾みたいだ。

どっちもマイナーで分かりづらいと思うのでググッてもらいたい。

そうして月と戯れてる内に、空は漆黒から藍へと色を変える。

本番はこれからだ。

さあ見えてきた。雲海に浮かぶ竹田城が…。

まだだ…
まだまだ…

…あれ?

なんて事だ!雲海の運が無かった!雲海チャレンジは失敗だ!
いやこれはこれでいいんだけども。

雲海というより雲、しかも雲散霧消しかかっている。粘っていても虚しいだけだ。そう思って下山し、第二展望台に戻ったのでまた見てみた。

…あれ?

こっちの方が良くないかな?当初のイメージとは違うけど、神秘的な感じがする。

これはもしかしたら第三展望台のが更に良いんじゃ…いや流石にそれは無いな。

第三のが良いじゃないか!

これこそが天空の城だよ!

まぁ下山すれば雲と城を見上げる形になるから天空の城に近づくのは分かる。
それなら闇の登山の意義はよ。

結局展望台どころか登山口の方からが一番の天空の城だし。

下に街があるからか、雲に浮かんでる感が一番ある。

雲の隙間から見え隠れする姿、

ラストダンジョンを発見したような高揚感と同時に、息を呑むような緊張感が入り混じる。

感動で武者震いもするが、すればするほど思う。

闇の登山の意義はよ!

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