平和のなべ。

愛用している平和の圧力鍋のパッキンがとうとうヘタレてきた。

かれこれ10年以上、一週間のお料理のうち何度も一緒にキッチンに立ってきた圧力鍋。そして、はるばる太平洋を3ヶ月に渡って私を追いかけてやって来て、舞台を日本からドイツに移して活躍している。

初めてドイツにやって来て、ダンボールの外に出してまずキッチンに持って行ってガステーブルの上にドンッと置いてみた。ルームメイトが来て「なにこの鍋?かっこいい」と言われてちょっと嬉しくなった。

もともと玄米を炊くために購入したんだけれど、それ以外にもお味噌を作ったり、私の大好物のフロマージュ・ド・テートという豚の頭を丸ごと使ったテリーヌ、煮込み料理に本当に大活躍のお方。中のパッキンもお手入れをちゃんとしていたけれど、秋と冬のシーズンを迎える手前にくたびれてしまった。

平和の圧力鍋はアルミ製である。見た目は丸っとしている。初めて来たときはシルバーでキラキラしていたけれど、10年以上の時を経て、現在は少し金かかった優しい色合いになった。重いけど、それでも片手鍋なので取り扱いしやすいし、なんといっても他のなべと違って持ち手がグラグラとヘコタレない。「一生ものだから」と決めて購入したので、未だに持ち手のプラスチックの部分は買った時の状態を保っている。私の中のグッドデザイン賞。

パーツを調べるためにお鍋を買おうか迷っていた時のように、HPをまた訪れた。株式会社鋳物屋さんがとにかくすごいのは、平和圧力鍋とアルミ製品しか作っていないことだ。しかも圧力鍋は10年経っても鍋の種類が多少増えたといっても同じ商品をメインに作っているからずっとパーツがある。ドイツのミーレ社の電化製品もそうだけど、40年前の掃除機のパーツだって交換できる制度は優れたパーツがあるからずっと優れたデザインの一部に使用され続ける。神は細部に宿る。まさにミース・ファン・デル・ローエが言った通り。

平和のお鍋のような、全てにおいて本当に優れていて、かっこいい商品が日本で作られているのは誇らしいのだ。



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