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ため息42:日銭の商売

日銭の商売で、前日仕入れて当日に売り切るという繰り返し。毎日、硬貨を数えて翌日に銀行に持参。売り子を管理し、事故を起こさないように保守的な姿勢を維持してひたすら現金を積み上げていた経営者がいました。この人は、日銭商売を維持しつつ、いつか日銭商売でない新規事業を立ち上げようと資金を蓄えていました。
ところが、皮肉なことがありました。日銭で原資を蓄えることに貢献してきた人たちは、新規事業にはまったく無縁で、立ち上げの人材としてまったく期待できないひとたちでした。

経営者のまわりには、何年もかけて作り上げた定型的な日常業務を忠実にこなす、経営者の信頼を裏切らない従業員が集まっています。この人たちに非定型的な業務でリスクを負った事業を任せることはできないのは、当の経営者がよく知っていることです。「新規事業立ち上げ」構想は日銭商売の従業員のやる気維持のためのアドバルーンだったのかもしれません。

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