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銀河の片隅で科学夜話

『銀河片隅で科学夜話』 全卓樹

各回10ページ弱ほどで、短時間で読み切るのにちょうど良いサイズ。

数学、物理学、天文、生物学など、科学の様々な分野の興味深い事柄を、筆者ならではの温かみとユーモアをもって日常的な景色に溶け込ませた、詩的な科学エッセイ集である。

セピアカラーの挿絵も美しく、筆者もおすすめしているように、夜寝る前のひとときや通勤電車の中で、一話ずつ読むのに最適の一冊だ。

この本のなにがすごいって、軽量サイズ(一話ごとのサイズも軽量なら本自体も小ぶりで軽量)ながら、単なる軽いショートエッセイではなく、一話ごとに、広く深いめくるめく世界が展開することである。

太陽系を超えて銀河の果てへ、地中のアリの王国の壮大な大河ドラマへ、はたまた世界中の無名の人々の脳内意思決定システムへ、文字を追い始めたとたんにぐいぐいと引き込まれていく。

そして仕事の合間のコーヒーショップで一話読み終え、本を閉じて外に出たあなたの、目に入る世界はコーヒーショップに入る前とは確実に変わっていること請け合いだ。

紹介されている事柄も、ニッチなものも多く、ポピュラーサイエンスなどである程度科学の話題に通じている人、また、理系なのでわりと知識はあります、という人にも、目新しい話が楽しめるかもしれない。何より筆者の、「世界は面白い」という心がそのまま伝わる、科学、人間、文化への愛に溢れた文章が魅力である。