発露
とあるプロのゲームプレイヤーの人が、炎上していた。
その人のことは寡聞にして知らなかったのだけど、ふと思い立ってその人をスポンサードしていたところで紹介されている「アスリート」のページを見てみたりした。
そのページに載っていた人の大半は、オリンピックなどに出るようなアスリートの人たちだったのだけど、中には先ほどの人と同じようなゲームの世界で活躍している人もいた。
よく「eスポーツ」と言われるが、そういうビデオゲームのプレイヤーの世界のことは率直に言ってほとんど知らない。
ゲームはすごく好きなのだけれど、格闘ゲームなどは小さい頃からあまりやらずに育ってきたので、すごいとは本当に思っているのだけどそれ以上の特別な関心は無かったし、自分には縁がない世界だなと感じていた。
そんな中でも、そのページにはただ一人だけ名前を知っている人がいた。
ウメハラという人だ。
僕と同じようにそういう世界にあまり関心を持っていない人でも、彼を知っている人は少なくないと思う。
実際にはウメハラさんの技量がどのくらいすごいのかとか、そういったことは結局よく知らないままなのだけど、プロのゲームプレイヤーというキャリアが、今のように一般的に認知され始めるずっと前からそういうことをしていたとてつもない人だ、というような認識はあった。
ウメハラさんを知るきっかけとなったのは、どこかで紹介されていたインタビュー記事か何かだったと思う。
もう詳しく内容は覚えていないのだけれど、この人は並大抵じゃないと感じたことだけは強く印象に残っていた。
Wikipediaのウメハラさんのページを見てみる。
今までの足跡や、ゲームで残してきた実績などがいろいろと書かれているが、あまりピンとは来ない。
読み進めていくと、「背水の逆転劇」という項目があった。
なんでも、独立したページが作られる程度にはメモラブルな瞬間だったらしい。
YouTubeで動画を検索した。
いったいどれくらいすごいのだろうと思いながら、見てみることにした。
見終わって、気が付くと目から涙が出ていた。
動画は1分程度の短いものだった。
前後の文脈なども動画の中では特に語られてはいないし、実際あまり把握できていない。
でも、そんなことはどうでもよかったようだ。
そこには、心に訴えかけるエナジーがとてつもない量で込められていた。
細かい能書きじみた説明なんて別に重要じゃないんだと、それを弾き飛ばさんばかりのパワーがそこにはあった。
まぎれもなくスポーツだと思った。
エレクトロニックであっても、間違いなく生身だった。
別に感動したから偉いとか素晴らしいとか、そういうのはあまり好きじゃないしどちらかと言えば思わないようにしている。
それでも、そうさせるものの価値は大いに認めたいし率直に受け取りたい。
研ぎ澄まされた技術と真剣な気持ちの激突。
でも押し付けがましくないし、だから嘘くさくない。
今その舞台に立っている人間だけがいる世界だからかもしれない。
そういったすがすがしさが、あの感情をより一層強く呼び起こすんだ。
今回はゲームだったけれど、別にこれに限った話じゃない。
人間なんだ。
自分が無意識のうちに求めていたものが何なのか、そのひとつがやっと分かった気がした。
すがすがしいということ。
それを大切にしたいと思った。
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。