ボツリヌス注射 ~そして僕は途方に暮れる~
挨拶をして入室すると、
少し状況を聞かれて、
すぐに注射だ。
心の準備もあまりせずに、
一気に二本打ってもらう。
構え過ぎたのか、
あっという間に注射は終わる。
痛みもほとんどなかった。
「ボツリヌス菌」の注射。
つまり、毒をもって毒を制するということか。
「効果は早ければ1週間、あるいは3週間後です」
えらく幅があるなあと思いながら、
御礼を言って病院を出た。
「これで本当の治療が始まるね」と妻も安心する。
実際の効果はどうだったか。
私の場合は、1週間では効かず、
3週間後から効き始めた。
しかし、対処療法しかないので、
注射の効き目は切れてくる。
4月になり、
新年度を迎えた。
長女のピヨちゃんは、
塾の春期講習があり、
毎日勉強に追われている。
長男のねこきちくんは、
将棋の上達のため、
詰将棋に夢中だ。
11級までは順調だったが、
3月は昇級できなかったからだ。
妻も新年度を迎えて、
仕事で忙しそうな日々を過ごしている。
それに引き換え、
私は何もできない。
もどかしさとボツリヌス治療の効果がまだ出ないため、
叫び出したいような衝動に駆られる。
とりあえず、何か目標というか目的というか
人生の指針のようなものを持たねばならない。
さて、どうしよう……。
そして私は途方に暮れるのだった。
※副題は、「福山雅治」さん「福山エンジニアリング」カバー曲「そして途方に暮れる」