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朝が好き。

朝が一番好きです。夜は何とも寝苦しく、タイマーでエアコンが切れれば窓を開けて、目玉のオヤジのようなサーキュレーターをまわします。小さなモーターの音が、夜に溶けていきます。

トイレに行こうと引き戸を開けると、そこはむわりとした湿度の、みっしりとした空気に満ちています。濁った水の中にいるようで、私のような人間は、肺からも皮膚からも呼吸がうまくできません。

やっとのことで再び眠りについて、起きた時、たった三時間しか変わらないのに濁った水は流されて、さっぱりとした朝が来ていることに気づきます。
午前5時の空気は清涼で、窓の外を見ればハスの花が今日も一輪咲くでしょう。

ここから1時間、あるいは30分、子供たちが起きてくるまでに私は白いページに昨日書きつけた断片的なメモを解いて散して、一つの文に編みあげます。
この時間が、今何よりも好きかもしれません。

鳥たちがよく鳴いています。椋鳥、鵯、子規、カラスに鳩、雀ごくたまに青啄木鳥や鶯。夜にたまに鳴くアオバズクは、朝になるとお休みです。夜を越えたことを喜ぶ勝鬨か、それとも今日を生きるための挨拶か、皆盛んに鳴き交わします。
カツンカツンと音がして、ベランダに鳥たちがやってきます。

2羽の鳩が並んで留まりました。

一方が大きく体を膨らませ、上下に首を体を動かしながら雌に迫っていきました。ぷうぷうと声を出しながら。小さいのはメスでしょう。たじろいで隅に追いやられて「なにしてんのあんた」みたいな顔になっているのが滑稽です。雌は飛び立ち雄は諦めずにぷぅ、ぷぅ、と鳴きながら追って行きました。
向かいの家のアンテナにはカラスが二羽留まり、そちらは頭を気持ちよさそうに毛繕いして、何か盛んに甘えています。仲良し。

そう言ったあれやこれやを、こうして文字に落としながら、子供たちの質問にこたえることもなく(なんていったって彼らは夢の中ですから)一人で観察するのが、とても幸せです。

朝は魔法の時間です。眠っている時、体の中できっといろいろなものが修復されていて、整備後のピカピカの時間なのかもしれない。
間もなく子供たちが「ううう〜〜〜」っと大きな伸びをして、寝ぼけた顔でやってきます。

それまで私は、うっとりとハスの蕾の開く様を、香りが溢れてゆく様を、しかと目に焼き付けて、一人心の中に閉じ込めておきましょう。



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