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エッセイ

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花束と水晶体(2023.12.31)

花束と水晶体(2023.12.31)

2023年が終わろうとしている。「退院した」と前回のnote(「EYEはPOWERだよ」)に書いた直後、再入院となった。検査の結果、あまり経過が順調でなかったからだ。右目を開けると水の中にいるようなぼんやりとした感じがあったけど、それでも光を感じることはできていたから治るのを待っていればいいと思っていた私はなかなか落ち込んだ。なにより再手術である。

「思ったより水が溜まっていてこのままだと見える

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EYEはPOWERだよ(2023.12.16)

EYEはPOWERだよ(2023.12.16)

「愛はパワーだよ」というなんともメロドラマ的で歯の浮くような科白を聞いたのはもちろんドラマの中である。当該ドラマ『to Heart〜恋して死にたい〜』(以下『to Heart』)は1999年に放送されたTBS系のドラマであり、当時中学生だった私はそれを毎週楽しみに見たものだった。内容はほとんど覚えていないが、ノストラダムスの予言が真実味を帯びていた世紀末、世界滅亡前に恋して死にたいと思っている三浦

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街とその超えられない壁(2023.4.28)

街とその超えられない壁(2023.4.28)

Bump of Chickenが「関ジャム」に出ていた。彼らはあまりメディア露出をすることがないため、録画して興味深く見た。Bump of Chickenは「天体観測」で衝撃デビューをして以来、常に前線で活躍しているバンドだ。ライブには若者の姿も多く、幅広い支持を集めている様子がうかがえる。テレビのスタジオでは現役バンドマンを中心としたフォロワーたちが思い出を語っていた。彼ら以外にも影響を受けたミ

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サブスクはサブカルを救うか(2020.3.27)

サブスクはサブカルを救うか(2020.3.27)

最近CDを整理する機会があった。20代のころは狂ったようにCDを買っていたので数回しか聴かずに段ボールの中に詰め込んでしまった作品もあるため、掘り当てるたびいちいち懐かしくなった。ゼロ年代にはサブスクがなかったから最先端の音楽を入手するにはAmazonやアングラサイトで、身銭を切ってフィジカルを買うしか方法がなかった(もちろん地方のレンタルショップには尖ったレコードは置かれていない)。購入前に視聴

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スーパーセール・リアリズム(2021.12.17)

スーパーセール・リアリズム(2021.12.17)

少し前にブラックフライデーがあった。私はセールがとても好きで、安く買うことに価値を見出す、典型的な消費者(=キャピタリズムの奴隷)である。別にお金に困っているとかそういうことじゃなくて(あまり持ってないけど)、「資本主義ゲーム」に参加しているような感覚でいる。このゲームには現実の通貨が使われるため、ゲームセンターよりスリリングである。競馬が100円の馬券1点でも楽しめるのは、価値のリアリズムによる

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知は立ったまま眠っている(2021.12.24)

知は立ったまま眠っている(2021.12.24)

昔流行った『電車男』の中に、映画に疎い女性エルメスへオタクである電車男が『マトリックス』を勧めるエピソードがあった(と記憶しているけど違うかもしれない)。『マトリックス』公開当時の99年は、「バレットタイム」(タイムスライス、マシンガン撮影)を用いて撮影された、あのポーズをみんなで真似していた。今だったらTikTokやリールで使い回されるバズなネタになっていただろう。

電車男による『マトリックス

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サウンド・オブ・メダル(2022.1.7)

サウンド・オブ・メダル(2022.1.7)

正月。なぜか自分は地元の友人とゲームセンターにいた。ゲームセンター? なんと蠱惑的な響きだろう。自分が小学生のころは「ゲームコーナーは保護者同伴なら可で、ゲームセンターは保護者同伴でも行ってはいけない」という規則があった。当時は「ゲーム」に対する評価が定まっていなかったため、とりわけ規則が厳しかった気がする。コンシューマーゲームが発売されると大人子供関係なしに熱狂したけれど、新しいがゆえにそれらに

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推しても引いても(2022.2.5)

推しても引いても(2022.2.5)

少し前の話。仕事から帰ってNHKを見ていたら『プロフェッショナル 仕事の流儀』の「となりのプロフェッショナル~推し活の流儀~」が始まって、そのまま最後まで見てしまった。ザッピングしていたら面白そうな番組が見つかってチャンネルを変えられなくなってしまうような体験はとてもよいですね。ふだん地上波はあまり見ないけど、NHKの組むニュースや特集はよく見ている。

「人は誰かを推すために生きている」とは宇野

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