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人形狩り人形と魔窟の主(#19)

承前

僕らを乗せたワゴン車を運転していた私立探偵の頭が───、弾けた。しまった、狙撃手タイプの❝呪い人形❞が待ち伏せしていたのか。しかし弾けてしまったものは仕方ない。大陸の故事成語には「お盆の水を零したらリカバリーは不可能」というものもある。僕は冷静に助手席からギアをLに入れて、十分に減速したところでサイドブレーキを引いて路肩に車を停めることに成功した。そこは廃墟のように静まり返った商店街だった。ここなら路上駐車も迷惑にはなるまい。車から転がり出ると荷台を開けて相棒を引っ張り出す。相棒の両手が謎の赤い液体に塗れている。僕はハンカチで丁寧に汚れを拭き取ってやった。薄汚い赤色は、神秘の機械人形には似合わない。

「僕ら狙撃手に狙われているみたいだ」
「この屋根が付いた道路を通れば事務所まで安全に戻れるだろう」
「あの車は、どうしよう」
「ジャンク屋に売れば今回の損失を補填できるだろう。シートを綺麗にすればな」

続く

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