ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第102わ「個人/群体」

(承前)

生きる為に人間を殺して血を啜るだけならば、納得は出来ないが理解は出来る。いくらなんでも暖を取る為に人間を殺して血を浴びるというのは……と言いかけて思いとどまった。相棒の反論が来ることが火を見るよりも明らかだからだ。人間も動物の毛皮を羽織る。更に歴史を遡れば動物の油を灯火用の燃料にしていた。蝋燭の材料にしていた。我々も他者の命で暖を取っていたのだ。

「あの、もしもし?どうしちゃったんですか?ニンゲンを食べ物にも慰み者にもする邪悪な怪物が目の前にいるんですけど?こう、霊長類としてガツン!と何か言ってやればいいじゃないですか?え?どうなんです?」

相棒が耳に手を添えて、瞳を閉じて、俺の言葉を待っている。手詰まりだ。

「うッわ、反論できなくてヘコんでいらっしゃるんですか?……いえ、ごめんなさい。私も言い過ぎでした。同胞を見殺しにせざるを得ないことで苦しんでらっしゃるダンナに言うことではなかったですよね」

(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?