見出し画像

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第140わ「緑の牧場に、憩いの湖に」

(承前)

俺は二匹の怪物に睨まれたまま身動きがとれずにいる。人間とハントマンの組み合わせとは何かが違う。外見、所作、身に纏う空気。こいつらは人間狩りだ。吸血鬼の貴族たるハントマンに対して、吸血鬼の庶民、マンハント。

「見た目はともかく味は良さそうです」

「横取りされる前に頂いてしまいましょう」

ハントマンにもピンからキリまであるように、マンハントにも同じことが言えるらしい。人語を解さず、武器を扱う知能も無いまま人間に襲い掛かる人間狩りの群れしか見たことの無い俺にとっては衝撃的な事実であった。俺の吸血女はこいつらに後れを取ったようだ。平民でも努力と機転で貴族を出し抜くことが出来るということか。俺は死ぬまで怪物どもの良いように振り回されてばかりだったが……。

「うっ」

「ぐっ」

人間狩りの体が、宙に、浮き上がった。

「私の、命令を、忘れたのですか?」

吸血女の声だ。読点の一つ毎に人間狩りの腕、足、頭が青い炎に包まれる。

(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?