ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第42わ「小指」
(承前)
「ダンナ、何を遠慮しているんですか?私の目玉も『ダンナの体に入りたいよ~』って言っています……」
相棒の手の上で周囲をギョロギョロと見まわしていた目玉が、今や俺の眼窩にギラギラと視線を集中させている。なんという熱視線。そんなことを言っている場合じゃない。早く戻せ。
「一度摘出したものを戻すのは気持ち悪いのでイヤです」
その気持ち悪い目玉を俺に押し付けようと言うのか、相棒。摘出された眼球は明後日の方向を向きながら静かに痙攣を始めた。
「もうすぐ目玉は死にます……。因みに、この目玉が死ぬとき私も死ぬつもりです」
相棒が静かに泣き出した。鳴き声に耳を傾ける。私は今までの❝ゲーム❞で、これほど冷たい仕打ちをニンゲンから受けたことは無かった。血も吸わせない、プレゼントもくれない、忠告も聞き入れてもらえない、差し出した眼球も受け取って貰えない。吸血鬼の貴族たるハントマンの誇りはズタボロです……ということらしい。
(続く)
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