今更だけどおれもニンジャスレイヤーTRPG:ソロ版をやってみたのだが(後編の「急」)

(後編の「破」はこちら)

然しもの住職もブッダに殉じて死を選ぶつもりは無いようだ。それでいい。善良なボンズが死ぬことでブッダが喜ぶとも思えない。おれは無慈悲なソウカイ・ニンジャではあるが、今は巻物を確保し、コロナを飲んで上機嫌だ。やはりコロナは良い。ケモビールやシュリンプビールを悪く言う気は無いが、コロナは世界に磁気嵐が吹き荒れる以前より飲まれているサケだ。つまり真のビールだ。おれはサケと音楽は古い方が好きなのだ。
……いや、おれの好き嫌いの話はどうでもいい。ラオモト=サンが、この巻物を心待ちにしている。一秒でも早くトコロザワ・ピラーに帰投するべきだろう。おれは踵を返そうとして───、何かがおれの視界に飛び込んで来る。ダンジョンに眠る現代の宝箱、デジタル賽銭箱だった。
ミヤモト・マサシの兵法書である巻物は、突き詰めて考えればミヤモト・マサシのものだ。戦いに生きた彼ならば、敗者が全てを失うことを理不尽だとは思うまい。たとえマサシその人が目の前に現れたとしても、おれはカラテでも言葉の投げ合いでも負ける気がしなかった。だがデジタル賽銭箱の万札はブッダのものだ。おれだって誰だって、ブッダには敵わない。何より、泣き叫ぶ住職とプリエステスが鬱陶しい。……おれはコロナと巻物で上機嫌だった。だから、ブッダの万札には手を出さないことにした。

(※【DKK】値は0です)

(※【万札】2⇒12になりました)

重金属酸性雨から守り抜いた巻物を抱えて、ラオモト=サンとの面会が許された。どうやらソニックブーム=サンが前もって話を通してくれていたらしい。おれの手腕、迅速さ、そして無慈悲なるニンジャとしての名前を高く評価してくれた。身に余る光栄だと素直に思った。平安時代のダイミョも、こうやって手柄を立てたアシガルを褒めていたのかもしれない。……平安時代か。おれのような教養の無いサンシタには思いを馳せることすら難しい、遠い昔の話だった。恭しくインセンティブを受け取ると、深々とオジギしてラオモト=サンのオフィスを辞去することにした。率直に言って任務よりも緊張した。何かシツレイをしていないか、変なことを口走っていなかったか、今更ながら不安になってきた。

(後編の「殺」)に続く

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