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今更だけどおれもニンジャスレイヤーTRPG:ソロ版をやってみたのだが(後編の「破」)

(後編の「序」はこちら)

ビルの屋上から屋上へと飛び移る。おれはニンジャだ。
もう私鉄とバスを乗り継ぐことも無い。通うべきカイシャも無くなった。在庫整理の仕事も、袖を通すべきユニフォームも今は無い。おれをセンパイと呼んでいた連中も既に───。
懐に忍ばせた小さな相棒が鳴動する。ナビゲーションは終了。無事に目的地に着いたようだ。今日のビズはソニックブーム=サンからの任務。この寺院に乗り込み、ラオモト=サンが求める巻物を奪えばいいらしい。上位者とのブリーフィングを反芻する。

「いいか、物騒な真似は避けろよ。血の気の多い他のサンシタに任せるのは不安が残る任務だがな。その点、お前は煮え切らないサンシタだ。ヤクザの目をしていないニュービーだ。今回に限って言えば適任かもしれねえ、そういうことだ。せいぜい役に立ってみせろや。……ガーゴイル=サンが、お前を見出したことをアノヨで誇りに思うぐらいにな」

ベストを尽くす旨だけを告げて、おれはトコロザワ・ピラーを後にした。おれはノーマーシー(無慈悲)。その名に恥じない働きをするだけだ。おれのセンセイであるガーゴイル=サンも、それを望んでいることだろう。
躊躇することは無い。本堂へと忍び込む。寺院の見取り図、警報装置の位置、見張りボンズの位置は把握済みだ。今のおれに出来ることは、夜の闇に紛れることだけ。

(※ワザマエ判定の出目は3,2,5,6でした)

そして境内への侵入は成功した。聖職者と戦わずに済んだことをブッダに感謝しながら、おれは胸を撫で下ろした。言い換えれば、ブッダがボンズをニンジャの魔手から救ったのかもしれないが。
いよいよ本堂へと侵入だ。問題はここからだ。邪悪なニンジャであるおれが重苦しさを感じるということは、つまり堂内には神聖な空気が満ちているということだろう。住職とプリエステスは自らの仕事に集中しているようだ。おれも、おれの仕事をやり遂げなければいけない。決意がみなぎってくるのが感じられる。
まずはアイサツだ。おれの名前、おれの所属、おれの目的を淡々と告げる。もっと怖がらせてもよかったかもしれない。そいつは今後の課題としよう。
住職とプリエステスは信仰心と責任感で恐怖に拮抗しようとしている。その心意気は敬服に値するが、おれのやることは変わらない。……ニンジャの力を目の当たりにさせてやる。
手っ取り早くカラテで痛めつけて情報を吐かせるのは……出来れば避けたい。拷問のノウハウが今のおれには無いのだ。おれがガーゴイル=サンから教わったのは、戦い方の基本だけ。今回は殺せば隠蔽が難しい相手だと聞かされている。この任務が終われば適当なモータルを見繕って思う存分、拷問の練習しようと思った。とにかくカラテ拷問は却下だ。では、どうするか。ニンジャマジックを持たないおれに何が出来るか。ブッダ像に供えられたコロナの瓶が視界に入る。それは天啓だった。ボトルネックカットチョップ!

(※ワザマエ判定の出目は6,4,2,6でした)

……冷静になって考えればチョップでビール瓶を切断するなど、カラテ拷問よりもハードルの高い曲芸だったのかもしれない。だが、おれは成し遂げたのだ。ブッダがおれに微笑んだのであろう。……いや、ブッダが自分の信徒をニンジャの魔手から守ったのだ。そう思うことにした。

(続く)

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