ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第133わ「短いお別れ」
……太陽が昇る時間だ。涼しい顔の吸血女と、明らかに顔色の悪い我が妹。
「兄さん、ごめん。学校があるから、みんなが起きる前に寮に帰らなきゃ」
「チッ。もうギブアップですか?太陽に焼かれて悶死する同胞を数十年ぶりに見られると思ったのですが……」
「すぐに兄さんを迎えに来ますから。……少しだけ待っていてくださいね」
それだけ言い残すと、矢も楯もたまらず妹はビルの屋上から飛び降りた。高所からの落下を恐れない身体能力。日光を嫌う習性。……それは、つまり。
「尻尾を巻いて逃げましたか。流石は❝二ツ星❞。向かい合ったハントマンの実力を見て取れるだけの判断力は備えているようですね。アッパレです」
吸血鬼になったかもしれない妹。そして日光を恐れない吸血女。理不尽だ。不条理にも程がある。何よりも辛いのは、俺が無力であることだ。今だって、自力で起き上がることも出来はしない。ましてや、自分の足で家に帰るなど夢のまた夢である。
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