人形狩り人形と魔窟の主(#12)
(承前)
四脚オートマトンの相棒に蹴られて、壁に叩きつけられる寸前の僕の胸中には「ああ、馬に蹴られて死ぬのは、こんな感じなのかな」という奇妙な感慨が生まれていた。後頭部と背中が壁に衝突するのに際して、激痛と共に現実感が戻って来た。痛い。それでも生きたい。
「僕は正気に戻った!」
「ならば早く体勢を立て直せ。為すべきことを為すのだ」
自分は何を恐れていたのか。
どうして何もかも諦めようとしたのか。
❝死の影❞の放つ圧力のようなものを知覚する。なるほど、対峙する人間を弱気にさせる能力のようなものが死神には備わっているようだ。早くも僕の心は再び恐怖に染まりそうになる。だが、それも相棒に再び蹴られる恐怖が僅かに上回った。
「相棒、❝聖なる火炎放射器❞だ!」
僕との距離を詰めようとする死神に対して真横から相棒の聖なる炎が放たれる。苦しそうに、というか鬱陶しそうに足を止めて両腕で炎を振り払おうとする。少しは効いているようだ。
(続く)
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