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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第120わ「自由意志」

(承前)

「ダンナ、騙されちゃいけませんよ。ゲームマスターは信頼できる、姿を見ていると安心する、彼女は自分の理解者だ……なんて思っているとしたら間違いなく彼女の能力によるものだと思っていいでしょう」

完全に相棒に指摘された通りだった。横目でゲームマスターを見ていると、ほんの一瞬だったが、明らかに動揺していた。正鵠か。

「それがどうしたね?彼が粗暴な君に愛想を尽かして、私を頼って教会を訪れたのは事実だろう!」

「ホラ!見てくださいよダンナ!目の前にエサがあるのに邪魔が入ったせいでゲームマスターも次第に本性を取り繕うのが億劫になっているのが分かるでしょう!?結局は彼女も人面獣心、本能で動くケダモノなんですから!」

相棒の表情はキラキラと輝いている。実力では敵わない「旧い友人」を攻撃するのが心底、楽しくて仕方ないといった様子だ。

「最後に判断するのは彼だ。自分が自分であるうちに死ぬことを選ぶのか。自分が自分でなくなっても生きていたいか。好きな方を選ばせればいい

相棒の笑みが更に深まった。懐に入れた右手からは青、緑、赤の小瓶が握られている。それは確かに人間の理性、本能、記憶を破壊するインセンスだった。そして左手には黄、橙、藍、紫の小瓶が握られている。それら七つの光が合わさって一つの巨大な光源となって俺に……否、俺の背後のゲームマスターを目掛けて放たれたのだ。

「何ッ!?君に❝インセンス❞の手持ちがそこまであったとは!!」

一つでも人間の人格を変異させる劇薬だ。いかに吸血鬼とはいえ、それを一度に七つも浴びるのは耐えがたいようで、ゲームマスターは一気に後退した。それを追うように相棒が前進する。その標的は俺だった。マントを脱ぐと、それ自身が意思を持つかのように俺の上半身に巻き付いてきた。

「ここに残って死にたいですか?死にたくないですよね!了解しました!」

俺の自由意志を確認するのは俺の口を塞ぐ前にして欲しかった。

(続く)

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