ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第41わ「救済措置」

承前

急場は凌いだ。命の危険が去った後にやって来たのは喪失感だった。ゲームマスターの前では殊勝な態度で臨むべきだったか。いや、相棒の制止を受け入れて聖域に行くのを断念していれば、こうやって視界の半分を闇に閉ざされることも無かっただろうに。これでは明日から学校にも行けないじゃないか。泣きたくなってきた。

「ダンナ、ダンナぁ」

相棒が俺の腕を軽く引っ張る。いかん。こいつに落ち込んでいるところは見せたくない。辛い時こそ気丈に振る舞うべきだ。そして何より、ゲームマスターは常に俺を監視しているのだから。

「私の目玉でよかったら、如何ですか」

相棒が俺に何かを差し出した。理解するのに時間がかかった。理解したくもなかった。彼女の眼球だった。変な声が出た。尻餅をついた。腰が抜けた。恐ろしさのあまりに涙が出そうになった。視神経がぶら下がったままの新鮮な眼球。まるでソレ自体が意思を持つかのように周囲を忙しなく見渡している。

続く

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