ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第35わ「応酬」
(承前)
敷地に入り、教会の扉を開ける。
中に入れば、神の家に居座る魔女の婆さんが待ち構えている。
心の準備など出来ていない。
冷静になれば引き返したくなるだろう。
「よく来たね、二人とも」
目を凝らす。司教座の前に若いシスターが立っていた。あるいは、シスターに擬態した吸血鬼と言った方が正確かもしれないが。
「お久しぶりです」
相棒が俺を庇うようにしてシスターの前に立った。声色は穏やか。顔色は酷いものだ。やはり、あのシスターが相棒の言う「魔女のおばあさん」で間違いないだろう。
「あぁ。君かい。まだ❝選手❞の立場に甘んじていたのかね」
穏やかではない。
言わんとすることは理解が及ばないが、魔女が相棒を挑発していることだけは理解できた。相棒の黒いマントが風も無いのにはためいている。
「今日の戦いぶりは見ていたよ。パートナーの前で随分と発奮していたじゃないか。見事なマウントと心臓摘出だった。もう少し貴族らしく戦えないのかな?」
(続く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?