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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第68わ「死の恐怖は死そのものより」

(承前)

相棒の眼光が更に強まる。俺の意思は恐怖に屈する寸前だ。呼吸もままならず、ぜえぜえ喘ぎながら言葉を繰り出す。……俺は、お前と同衾する約束など、しなかったはずだ。

「ええ、そうですね。この私としたことがダンナのペースに振り回されて同衾する約束は取り付けられませんでした。……ですが、こう考えることも出来ますよね?同衾しない約束はしていないのです!

べらべらと相棒が喋り出すと、息苦しさが僅かに和らいだ。

「私は思い出したのですよ。この世界のシンプルなルールをね。即ち、強い者は何をしてもいいのです。弱い者を好きなようにしてもいいのです!だから私は、私の自由を行使します!」

頭の痛くなりそうな御託を聞き流しながら身体の自由が少しずつ戻って来るのを待つ。相棒の百の腕が依然として俺の身体を拘束しているが、それでも付け入る隙はある。吸血鬼の凝視に対抗する最後の切り札、吸血鬼から押し付けられた、吸血鬼の右目がある。

(続く)

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