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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第69わ「死の恐怖は死そのものより」

(承前)

元の持ち主と視界を共有し、塞ごうとすると激痛を送り込んで来る忌まわしき新しい右目よ、こんな時ぐらいは役に立ってもらわねば困る。……自前の左目を閉じて、双眸を爛々させる相棒との眼力勝負に打って出る!

「……!?」

相棒の瞳には俺の姿が映っている。俺の瞳には相棒の姿が映っている。相棒の瞳には俺の姿が映っている。俺の瞳には……俺には……俺は……。

「もしもし?大丈夫ですか?」

冷たい何かが、頬にぺたぺたと触れている。そして相棒の声が聞こえる。俺の身体は闇の中に横たわっていた。意識が飛んでいたのだろうか。もう夜になったらしい。暗くなるまで床で寝ていたのか。それにしては体の何処にも痛みは無い。俺の身に一体なにが起きた?

「結論から言うとダンナは正気を失って動物みたいになっていたので強制的に意識を失ってもらいました。理性が戻って来たのは幸運だったとしか」

深淵を覗く者への有名な警句を思い出さずにはいられなかった。

(続く)

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