ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第134わ「その胸、その腕、その勇気」
夢でも見ていたのだろうか。身動ぎをするだけで全身に激痛が走るというのに、気付いた時には既に棺の中で吸血女の隣に身体を横たえていた。
「あれ?もう麻酔が切れましたか。無理しないで休んでいてください。全身が折れて捻じれて、とんでもないことになってますので。棺の中で何日か大人しくしていれば全快すると思いますが……」
全身が❝魔王の翼❞で拘束されている。意識は半ば朦朧として、恐怖も苦痛も焦りも感じられない。考えるべきことは多いのだが、集中力が持続しない。
「思いますが……残念なお知らせがあります。ここに留まればダンナの妹君の襲撃を受けることになるでしょう。ですので、場所を変えます」
待て。今の俺は寝返りをするだけで悶絶するほど全身が痛むのだが。
「自業自得です。大人しく❝此処❞に収納されていれば良かったのに」
吸血女は恨めしそうに俺を見ながら下腹部を両手でさすっている。そこに飲み込まれるよりは何倍もマシか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?