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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第96わ「罪も罰も越えて」

(承前)

こう言えば分かってくれるだろうか。俺は人間。相棒が仮に……芝刈り機だとしよう。

「ますます意味が分からなくなりそうですが」

最後まで聞けって。もしも芝刈り機が持ち主の手を離れて誰かに怪我でもさせたりしたら悪いのは誰だ?芝刈り機が悪いのか?違うな、悪いのは持ち主だ。つまり人間だ。俺が言いたいのは、そういうことなんだ。

「私はダンナの機械だと?確かに機械が誰かを襲うのは整備不良が原因かもしれませんね。こまめに油でも挿してもらえれば、防げたかもしれない悲劇……

相棒は満面の笑みで俺の首に手を回してきた。今の比喩は失策だったか。それでも俺の血を今ここで飲ませるわけにはいかない。顔も名前も知らない誰かさんを人質にされる度に吸血鬼に献血していれば早晩、俺は人間の干物になっているだろう。俺の血は切り札。唯一の交渉のカードなのだから安売りは出来ない。

「……まぁ、ダンナがそう言うのは分かっていましたけどね、ええ」

(続く)

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