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ぼくは(狂った)王さま #36

「アラカ君が潰れて死んでも、目玉が飛び出ても、手がもげても、ひざのお皿が砕けても、頭蓋骨が砕けて少な目の脳ミソが弾けても、■■■■が……」

 ぶちぶちとプリスの物騒な祈りは止まることを知りません。ですが、それを聞かされるアラカは「これから別行動をするぼくの為に、こんなに長く祈ってくれるなんて、ぼくは良いシスターを仲間を持ったなぁ」としか思いませんでした。

「アラカ……もう少し人の心がわかるようになった方がいいのでは……」

 既にアラカは、りゅうの女王に自分を肩車させると、ツノをつかんで出発進行のポーズです。プリスの視線が、りゅうの女王に向けられます。これは「助け舟を寄越せ」のサインです。人間でなくても、それぐらいはわかるのです。わからないのはアラカだけです。

「……そうだな。困っている民衆を救うことは、人望のない王を守って戦うよりも、アラカの名声を高めることにつながる……かもしれない……」

 言い終わらぬ間に、これは悪手だったと、りゅうの女王は思いました。アラカが名声を求めて戦うような人間ではないことは、わかりきっていることなのに。かくなる上は、小細工は抜きにして率直な思いを打ち明けることにしました。

「戦場では何処から矢が来るかわからん。私も「全治」を使えない状態では、アラカの身に何か起きてからでは遅いのだぞ。そもそも、寺院と坊主どもの安全が確保できねば、復活の奇跡をあてにすることも出来ないのだ。拠点にして戦うならば、兵のいない王宮よりも、坊主ともの後ろ盾がある寺院の方が長期的には都合が良いと私は思う。まぁ、正直に言えばな、私もプリス殿も仮眠を摂りたいのだ。まほうの回数を回復させる為にもな」

 ここまで言われて、はじめてアラカは思案を始めました。そう、心の何処かでは「ぼうけんしゃの身に何が起きても、きょうかいに死体を運んでもらえれば問題ない」と思っていたのを認めるしかありませんでした。(続く)


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