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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第131わ「さらば、愛しきひと」

(承前)

何と甘美な響きだろう。妹と、家に、帰る。消えた両親のことを妹に説明せねばならないのは頭の痛い問題だが、そんな悩みは瞬きする間もなく消え失せた。全寮制の女子校に通っている妹と最後に会えたのは夏休みの、ほんの数日間のことだった。あれから二か月。妹は更に美しくなった。じっと見ていると、吸血女が現在進行形で一秒ごとに俺のアバラを一本ずつへし折っているのも気にならないぐらいの美しさ。この間わずか十秒。

「チッ。何本目で正気に戻るかと思ったのですが……こいつは重症ですね」

冷静になって考えるなら両親が消えたことなどよりも、家に帰ればこいつの寝床、つまり棺桶が堂々と居間に鎮座していることの方が問題に思える。

「いいですか?今から耳が痛くなる事実を指摘しますから、どうか心を強く持ってくださいね?……数か月ぶりに再開した兄貴が片目の男になっているのを気にしない妹さんが、何処の世界にいるっていうんですか、ねえ?」

(続く)

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