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ハントマン・ヴァーサス・マンハント

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逆噴射小説大賞に応募にしたパルプ小説と、その続きを思いつくまま書き殴っています。ヘッダー画像もそのうち自前で何とかしたいのですが予定は未定のままであります。
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2020年6月の記事一覧

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第146わ「もう一つの❝ゲーム❞」

(承前) 怪物と戦う為に、怪物と上手く付き合う。即ち、毒を以って毒を制する。問題は、その手段。人間と吸血鬼が仲良くなるには、どうすればいい?踏み込んで考えてみる。何らかの共通の楽しみでもあれば、もしかしたら。 「そうですね。既に邪魔な従者どもは追い払いましたし……室内で二人きりで出来ること、何かあるでしょうか?」 屋内での、それも身動きのとれない人間でも参加できる一対一のレクリエーションか。トランプを用いたゲームは真っ先に却下。何故ならば、俺の視界は吸血女に筒抜けだから

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第145わ「進展」

(承前) 「私とて❝一ツ星❞の下積み時代があったのですよ?負傷した家畜の世話など慣れたものです。さてさて、まずは何から始めましょうか……」 ……。 「お腹は空いてませんか?」 ……。 「眠たくはないですか?」 ……。 「……何かして欲しいことはありますか?」 ……。 「了解しました。流動食を流し込まれて気絶するように眠りたいのですね」 用を足したい。自力で立ち上がれないので誰かに助けて欲しい。 「何ですか、トイレに行きたいのなら素直にそう言えばいいのに…

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第144わ「高潔、あるいは高慢ちき」

(承前) 「なるほど。つまり、こういうことですか。私に、あなた方の❝おこぼれ❞に与ればいいと……」 吸血鬼の薬指と小指が氷柱のように伸びた、と思う間も無かった。二匹のマンハントが額を貫かれて黒い体液を流しながら許しを乞うように床に両膝をついている。吸血女が両手を叩くと、見えざる何かに引きずられるような、操り人形のような歩き方で二匹のマンハントは部屋から退出した。 「……というワケで。全身の筋肉と骨がズタズタで要介護なダンナの世話は私が見させていただきます。異存はあります

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第143わ「一貫性」

(承前) 「……は?私のダンナを味見したい?冗談でも言って良い事と悪い事が……」 「お嬢様。何も我々は……」 「❝最初の一口❞が欲しいと言っているのではありません」 「「そこなニンゲンの利き手でない方の指でも頂ければ満足です」」 「私は薬指を」 「ならば私は小指を」 まずい。指を失うのは困る。❝ゲーム❞に支障は無いかもしれないが、生き残って元の生活に戻った後のことを考えれば非常にまずい。八本指の高校生なんて周囲からどんな扱いを受けるか分かったものじゃない。 「

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第142わ「チェックイン」

(承前) どうやら俺は吸血鬼の貴族のパートナーに相応しくない容姿をしているらしかった。光栄なことだね。この顔は生まれつきなんだ。文句があるなら両親に言ってくれ。……この世界の何処かで生きていてくれるといいけどな。 「お嬢様。今の我らは、言わば……」 「数年ぶりに起動した、シンバルを鳴らすサルの玩具にございます」 「「まずは新しい電池に代わる、当座の食糧を要求します」」 「チッ、わかりました。ルームサービスで昏倒させたニンゲンを注文します。ただし、食事は隣の部屋で済ま

ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第141わ「品評」

(承前) 吸血女の無事を知って、俺は不覚にも安堵してしまっていた。他意は無い。彼女が死ぬときは俺が殺されるときなのだから。 「命令……もちろん忘れてはおりませぬ」 「その前に少し腹ごしらえをと思ったまで……」 何かがおかしい。青い炎に包まれながらも二人組は平然と会話を続けている。こいつら、並のハントマンよりも頑丈なのか。 「あなた達には身動きのとれない私の……パートナーの世話をするように言ったでしょう!?何ですか、『味は良さそう』とか、『横取りされる前に頂こう』とか