心が折れた時に使える心理学テクニック2選
「しなくていい苦労ならしなくていいのよ!」
わたしが初めて入学試験と言うものに落ちた時,母は父に静かにそう言った。
わたしは小さな頃から要領がよく,どこをどうすれば最短でものごとを成し遂げられるかを見抜く力があった。
それは人に対しても同じで,4,5歳の頃から,人にものを教えることが得意だった。
逆上がりができないクミちゃんに,「ここをこうして,ほら,足をもっとあげて蹴ってみて」なんて,アドバイスをいっちょ前にすると
あーら,不思議,クミちゃんは上手に地面を蹴って,くるんと上手に逆上がりができた。
その様子を見ていた同級生たちが,「カオルちゃん,教えて!」と,わたしの前に列をなした。
授業中も,窓の外をぼんやり眺めていてばかりだったから,先生に「聞いていないだろ」のような懲罰的な指名を受けても,耳はしっかりと聞いているので,すらすら答えていた。
心理学研究者の今なら,なぜ,そうできるのかの理由もわかるし,説明できるけれど,「ズルい」とよく,友だちに言われた。
要領の良さだけで生きています
だから,悪いことをしても,わたしだけ先生に注意されないし,要領よく学校生活を送っていた。
試験勉強もまんべんなくやるのではなく,ヤマを貼って出そうなところだけを勉強するし,苦手なところはとことんやらない。
できないところをできるようにする,平均的にまんべんなく点数をあげることなんて,みじんも思ったことがない。
無駄な努力だと思っていたから,どうすれば,得意な教科で平均値をあげるかだけに注力した。
日本の公教育は,まんべんなく全ての教科を強化する,苦手を克服することをよしとする。
反対に,アメリカは,苦手を克服するのではなく,得意を活かして伸ばす教育が強いという。
そうだ,わたしは自力でアメリカ型で自分の能力をのばすことをしてきたのだ。
だから,国語だけは何をしなくても異常にできたので,大学予備校の模試で,全国レベルにランクインしてしまい,私学受験コースから東大受験コースに変更するように予備校の先生に言われた。
とんでもない!
国公立なんて,オールマイティに平均を取らないと合格しないから,わたしが東大を受けたところで,歯牙にも棒にもかからない。100年経っても受からない,浪人生だ。
「わたしは行きたい私大がありますので,国立大にはいきません」
先生にはそう言って,私大受験コースに居残った。
そして,ちょうど今のような秋に受けた模試で,D判定をくらったことにショックを受け,指定校推薦を学校からもらうことにした。
「わたしの評定平均で今から指定校推薦をもらえる大学はありますか?」
そんな浅はかな女子高生の質問に,進路指導の先生はあきれることもなく,いくつかの大学を教えてくれた。
わたしが在学していた高校は,大学付属だったけれど,内部進学してまで進みたい学部はなかったし(一応,どこの大学にもひっかからなかった場合の保険として付属校を選んでいた),外部受験が普通だった。
ここでも要領のよさをいかんなく発揮していて,大学付属というシード権の他に,推薦入学ができるように評定平均をできるだけ高く保つこともしていた。
でも,生物や物理は大好きだったけど,化学はからきしダメ,高等数学は公文式で鍛えた数Ⅰ数Ⅱ以外は,赤点スレスレ。
医学部にあこがれたこともあるけれど,日本の文系理系の線引き入試では,理系も点を取らねばならないので,さっさとその夢は捨てた。
文系に進むのはイヤだけど,法学にも経済学にも興味がなく,どうしたら,理系教科を取らないで,大学受験に楽に受かるかだけを考えていた。
そんな時,新聞を読んでいたら,脚本家の橋田壽賀子さんのインタビューが載っていた。
壽賀子さんは,わたくしと同じく,理系がからきしダメで,文系だけが得点源だったので,どうしたら,大学に合格できるかを考えたら,オールマイティにできなくてはいけない国公立ではなく,文系だけで受験できる私学の文学部にした。
そんな記事だった。
これだ!
壽賀子ありがとう!
高校2年から文系理系の受験コースに分かれるクラスも,私大受験コースにして,ひたすら文系教科の評定平均をあげた。
それが功を奏して,D判定からの日和った指定校推薦で大学合格を勝ち取った。
指定校推薦をもらうまで,その大学なんて合格判定志望校にも書いたことがないので,親がびっくりしていた。
そんな調子だから,わたくしの受験勉強はとても偏っている。
興味のないこと,無駄な努力は1ミリもしたくないのだ。したくないというより,できないのだから仕方ない。
そんなもんだから,安全パイを選んだ受験しかしてこなかったわたくしが人生で初めて不合格をくらったのが大学院受験だった。
しかも,指定校推薦で受かった母校の大学院に落ちた。
え?高校の時の模試でA判定だから,寝てても入れるとバカにしてたんだけど(イヤな奴だ),なんで,大学院難しいの?
そうなのだ。母校は大学と違って,大学院はとても入試が難しく,外部から来た人ばかりだった。
大学院は,大学と違って専門教科だけ(心理学と英語)の試験なので,国立もわたしは受験した。
そして,コレも落ちた。
母校にも落ち,国立にも落ち,さすがに私も面食らって,泣いた。
そんな娘の様子を見て父が言った。
「カオルちゃん,人生で初めての挫折でしょ。挫折を経験しておくのもいいことだよ」
そして,そんな父の言葉にかぶさるようにしてすぐさま,母が言ったのが冒頭の言葉だったのだ。
しなくていい苦労なんてしなくていいのだ。
蛇足だが,母は数秘学でいう「数秘9」,苦労性の「9」だからこそ,そんな言葉が出たのだろう。
だけど,全てのマイナスを回避して生きることなんてできないし,できたとしても,そんな人生相当つまらない。
「もうダメ」
そう思った時こそ,チャンスで,どうやってリカバリーして這い上がってやろうかと思うと,アドレナリンが出て,ワクワクする。
でも,できることならば,心が折れる経験は,人生の後半でするよりも,若さでリカバリーできる若いうちにしておいた方がいい。
一度経験すれば,だいたい自分の強度がわかるし,二度目からはどのくらいで自分が立ち直れて,どうふるまうかの予測も尽くし,要領もわかって,格段に強くなる。
そして,何よりいいたいのは,起こった出来事の事実は変えられないけれど,出来事に対する感情的な評価は変えられるってことだ。
マイナスだとその時は思っても,実はそれは伏線で,それがなければ,今の自分にはなっていないってことが多々あるから。
わたくしに関しては,大学院に落ちたことで,滑り止めで受験しておいた大学院に拾ってもらって,今がある。
この大学院に進学しなかったら出会えなかった出会いがたくさんあったし,経験もあった。
何一つ後悔していないし,むしろ,落ちてよかったとさえ思っている。
さぁ,人生訓の今日のまとめだ。
違う!違う!
これ,学習心理学や社会心理学で扱う,心理学テクニックなんです。
言いたいのは,コレ。
その1 得意を活かして苦手さをカバーすべし
その2 マイナスに思える出来事もプラスに変えられる(リフレーミング)
これぞ,心が折れた時の復活のおまじない,いえいえ,これまた,心理学用語の「レジリエンス」っていう,心のリカバリー力なんです。
リフレーミングとレジリエンス,心理学って意外と使えるでしょ?
論文や所見書き、心理面接にまみれているカシ丸の言葉の力で、読んだ人をほっとエンパワメントできたら嬉しく思います。