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#10自分ファーストで!

「ステイホームなんて,犬かよ?」
と,自意識過剰な中学生のように,うそぶきたくなる。

だって,このいつ終わるかわからない疫病の流行の中で,ステイホーム中の家族の居心地のよさを支えるために,一体,どれだけの女性,とりわけ,母親たちが疲れ切っているのかと思うと,切なくなるのだもの。

その疲れ切った母親は,少なくとも,ここに一人はいる。わたしだ。

3月初めに,2週間も早く春休みに突然なって以来,学校は臨時休校を続けている。かろうじて,学童保育と保育園は閉めないで子どもを保育してくれていたが,4月7日に緊急事態宣言が出てからは,どうしても出勤が必要な仕事に就く親のための特別保育以外は,一切,利用できなくなった。

離れて暮らす親を呼び寄せるか,親に託児をお願いしたいが,親とて長期間保育をお願いすることは無理だし,なにより,長距離の移動は無理だ。こうして,親が養育する以外の外的な子育て支援は,スパンと切られた。

子どものあずけ先がなくなり,仕事に行くことができなくなった母親たちは,今,在宅ワークに切り替えたりして,ステイホームしながら,仕事をしている状況だろう。

わたしも,どうしても出勤しなくてはいけない仕事以外は,休むか,在宅で仕事をしている。いや,仕事なんて,ほぼできていない。2割ぐらいの稼働率で,遅々として進まない。

だって,家宅学習の課題もなく,ただただ暇を持て余している小学生と保育園の子どもを朝から寝かしつけまでの間,ワンオペレーション家事労働しながら,お世話するのだもの。これって,もう地獄。お母さんの無間地獄。

うぇーん。

と,泣いてみたいが,泣く気力さえ残っていないし,そんな水分があったら,保湿にまわしたいくらい干からびている。冬の北風に吹きさらされてカラカラに乾燥し切った切干大根くらい,この2か月で干からびた。

もちろん,家庭を取り仕切り,報われない無償の家事労働をするのは,母親だけではない。日本の男性の家事労働参加率は先進国の中でもワーストであることは,多くのデータによって,明らかにされているし,ここで議論したい訳ではない。

この分析のように。

でも,男性だって,誰だって,たぶん,それなりに,百歩譲って,大変なのだろう。おそらく,第二次大戦後の昭和時代の日本に生まれ,失われた30年と言われる空白の平成時代を生きのびてきた人だったら。

そうだ。わたしたちは,生き延びてきたのだ。

1000年に1度しか遭遇しないレアな大地震と津波と原発事故の三つ巴災害が起きたのが,今から9年前の2011年3月11日だ。1000年前なんて,1000年前は平安時代で,光源氏がいた時代(世界最古の小説の登場人物だけど)で,隙間風がピューピュー吹きこんでも,「炭もてわたりていとをかし」と,風流ぶる極寒世界。

それより,繁栄を極めた日本に生まれたなんて,相当,ラッキーだな,わたし! と,脳内変換してみる。

あれ? なんか,いいかも? ちょっと気分が軽くなったかも? 

これは心理学の専門用語で,リフレーミングという,認知行動療法の手法だ。商売道具の心理学は,こういう時に使わなきゃ!と,さらに,自分で自分を鼓舞する。

いや,鼓舞する必要ないから。

むしろ,こういう非日常の時は,しっかり休息をとることが最善策だ。

先が読めない非常事態で,24時間母親業務を「させられている」ことは,常に神経をすり減らして,見えない敵と戦うストレス反応である。いわば,脳の誤作動だ。

 脳の誤作動は,結構な頻度でわたしたちヒトに降りかかってくる。なぜなら,ストレスは脳内ホルモンと関わってくるからで,特に,女性はホルモン分泌量が人生の中でアップダウンしやすい体のつくりである。

例えば,妊娠中は,オキシトシンという愛情ホルモンが増えて,授乳の合間の1時間の仮眠を細切れにとるような,赤ちゃんの下僕になりさがる「生理的没頭」がある。

これも脳の誤作動で,正気だったらやっていられないから,非常によくできたシステムだ。もちろん,男性も性ホルモンがあり,テストロゲンの分泌が増える中高生は言動が荒いなど,わたしたちの行動は,脳によって支配されている。いや,脳を支配しているのがわたしたちか?

 ああ,思考の無間地獄だ。これは,相当なストレス状況下にあるとみえる。

でも,これは脳の誤作動であるから,キッパリとあきらめて,もう寝るしかない。だって,わたしのせいじゃないのだもの。もちろん,あなたのせいでもない。脳の暴走,脳の誤作動なのだから。

全世界のお母さん,しっかり寝てください。寝ると成長ホルモンが出て,脳がリセットされ,いやなことも忘れます。家族のお世話は放置して,自分ファーストで休息してください。心理士からのお願いです。


論文や所見書き、心理面接にまみれているカシ丸の言葉の力で、読んだ人をほっとエンパワメントできたら嬉しく思います。